なぜに竹中平蔵を?新自由主義否定も「権化」を重用する岸田首相の怪

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先日掲載の「またも潜り込む竹中平蔵。岸田政権『新しい資本主義』の大ウソを暴く」でもお伝えしたとおり、定義が不明で矛盾点も多く見られる新しい資本主義ですが、この程首相自らが月刊誌に「新しい資本主義のグランドデザイン」についての論文を寄稿しました。その論文を精読した上で、「やはりどこが新しいのかはよく分からない」とするのは、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんはメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で今回、「岸田文春論文」を引きつつそう判断せざるを得ない理由を詳しく解説するとともに、まずは天下の大愚策であるアベノミクスの総括が先決との厳しい意見を記しています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2022年1月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

岸田首相の「新しい資本主義」のどこが新しいのか?/『文藝春秋』2月号の論文を精読する

岸田文雄首相が『文藝春秋』2月号の巻頭で「私が目指す『新しい資本主義』のグランドデザイン」を“緊急寄稿”した。何が“緊急”なのかと思えば、冒頭の一節「私の提唱する新しい資本主義に対して、何を目指しているのか、明確にしてほしいといったご意見を少なからずいただきます。……このような声にお答えすべく、私が目指す新しい資本主義のグランドデザインについて、お話をしたいと思います」で明らかなように、彼の「新しい資本主義」の何が新しいのかが明確でないという声が圧倒的なので、何とかそれに答えなければならなくなったということなのだろう。

しかし、結論から言うと、これを読んでもやっぱり彼の「新しい資本主義」のどこが新しいのかはよく分からない。本誌はNo.1,127「日本政界を覆う『哲学の貧困』の深刻/例えば『デジタル田園都市構想』の浅薄極まりなさ」でそれを論じているので、一部は繰り返しになるけれども岸田文春論文を吟味しておきたい。

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福祉国家論は無評価、新自由主義は否定?

1.「資本主義は、市場を通じた効率的な資源配分と、市場の失敗がもたらす外部不経済、たとえば公害問題への対応という、2つの微妙なバランスを常に修正することで、進化を続けてきました」(P.95)

これはもちろん「資本主義」の本質論ではなく機能面のみを取り上げている。

2.「20世紀半ばの福祉国家に向けた取り組み、その後の新自由主義の広まりは、いずれも、そうした資本主義の修正、……進化の過程の1つです」(P.95)

北欧に代表される福祉国家論は、確かに資本主義の進化形態の1つであるが、それがいかなる意味で「進化」を実現したのか、それが良かったのか悪かったのか、日本が取り入れるべきなのかどうかについては何も言及がない。

3.「市場や競争に任せれば全てがうまくいくという新自由主義の考え方は、1980年代以降、世界の主流となったが、他方で弊害も顕著なってきました」(P.95)

その弊害としては、(a)「欧米諸国を中心に中間層の雇用が減少し、格差や貧困が拡大」、(b)「自然に負荷をかけ過ぎたことで気候変動問題が深刻化」、(c)「短期的な効率化重視の企業経営ゆえに、サプライチェーンやインフラの危機に対する強靭性が失われた」──が例示される。これにより、米英型の新自由主義とはきっぱりと決別するつもりであることは分かるが、それにしては(No.1,127でも指摘したが)首相肝入りの「デジタル田園都市国家構想実現会議」のメンバーに日本的新自由主義の張本人である竹中平蔵=慶應大学名誉教授を呼び込んだのは一体どう言うわけなのか。彼に一体何を期待しているのか、きちんと説明してほしかった。

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