中国軍上層部が認めた、台湾武力統一は「失敗のリスク大」という事実

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これまでも「中国が台湾本島を封鎖し兵糧攻め?そんな作戦は不可能と断言できる訳」等の記事で、中国による台湾軍事制圧の可能性について冷静な議論を訴えてきた、軍事アナリストの小川和久さん。しかし国内メディアは何かにとり憑かれたように、台湾有事論を伝え続けています。今回小川さんは自身が主宰するメルマガ『NEWSを疑え!』で、そんな現状に対して抱かざるを得ない懸念を記すとともに、「戦わずして勝つ」の実践でもある中国の「三戦」への正しい対応を呼びかけています。

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「三戦」の掌で踊らされていないか

昨年の後半から、台湾有事についてリアリティの伴った議論をしないと、有効な戦略を構築するうえで「目が曇る」と指摘してきました。

台湾全土を武力制圧して「統一」を実現するには、第2次世界大戦のノルマンディー上陸作戦に匹敵する着上陸を成立させるための条件が必要であることを客観的なデータで明らかにし、今号のストラテジック・アイでも再び整理させていただきました。

なにしろ、100万人規模の兵力を輸送する船舶が中国にはない、台湾の海岸線の10%しか上陸に適した場所がない、台湾海峡上空での航空優勢をとる航空戦力がない、台湾を海上封鎖しようにも日米の海軍力に阻まれるというのですから、作戦が成立しないことは誰の目にも明らかです。

実を言えば、中国人民解放軍の上層部も私との突っ込んだ議論のなかで、作戦を強行すれば失敗するリスクが大きいことを率直に認めています。

中国が台湾にハイブリッド戦を仕掛けるのは、そうした強行策が成り立たないことを自覚しているからでもあります。

そんなことは、例えば自衛隊のOBであればわかっていそうなものですが、実はそうではない。海上輸送の計算式などは、陸上自衛隊でしか教えていないからです。

そういうなかで、右往左往の台湾有事論がマスコミに登場するのですから、まさしく中国の「三戦」の術中に陥っている、中国の掌で踊らされていると言わざるを得ません。

三戦とは、中国の主張を世界に声高に発信し、同時に中国の国際的イメージを良くすることにも腐心する輿論戦、国際法を研究し、国際法を活用するために国内法を整備する法律戦、空母や対艦弾道ミサイル、極超音速滑空体など強面のする兵器を次々に登場させ、周辺諸国を威嚇し、心理的に揺さぶる心理戦のことで、別名「砲煙の上がらない戦争」と呼ばれています。

この中国の考え方の根底にあるのは古代中国の戦略の書『孫子』の「戦わずして勝つ」で、三戦は2003年から人民解放軍政治工作条例に加えられました。

日本でも三戦のことを語る人は少なくないのですが、現在進行形で議論されている台湾有事や海洋進出を三戦に照らして眺める作業は遅れたままです。

いま一度、中国の三戦の進み具合を研究し、それに日本が踊らされていないか、基本に立ち返って考えてみたいものです。(小川和久)

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image by: Fasttailwind / Shutterstock.com

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地方新聞記者、週刊誌記者などを経て、日本初の軍事アナリストとして独立。国家安全保障に関する官邸機能強化会議議員、、内閣官房危機管理研究会主査などを歴任。一流ビジネスマンとして世界を相手に勝とうとすれば、メルマガが扱っている分野は外せない。

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