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丸亀製麺、ついに香川県内は残り1店舗に…。「発祥は兵庫」うどん県の民に“外敵”同然の扱いをされるなか、完全撤退は絶対に避けたい事情とは?

“うどん県”香川においてはある意味で貴重な存在とされていた、うどんチェーン大手「丸亀製麺」のとある店舗が、今年2月末をもって閉店になるという情報が、SNS上で大きな話題となっている。

投稿されたツイートの画像によると、閉店するのはイオンモール高松にあった店舗。香川県内にある丸亀製麺の店舗は、公式サイトの店舗検索によると高松市内にある2つだけの模様で、新規出店がなければ残りは「高松レインボー通り店」のみになるようだ。

このツイートに対して、SNS上では「香川なら300円でもっと美味い店そこら中にある」「香川のうどん屋ならかけうどん並290円で丸亀製麺の大サイズレベル」などと、うどんの本場である香川だけに当然の結果……といった反応がほとんどで、閉店を惜しむ声はほとんど聞かれないといった状況だ。

香川県民から“外敵”同様の見方をされる丸亀製麺

昨年は「丸亀うどん弁当」が、発売から約7か月で累計1,500万食を突破する大ヒットとなり、さらにTOKIOとのコラボメニューも好評な丸亀製麺だが、ことに香川県民からは、上記のようにいたって冷ややかな目線を向けられることが多い。

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その背景にあるとされるのが、丸亀製麺が香川発祥ではないのにも関わらず“讃岐うどん”を標榜し、全国チェーンであることの知名度・影響力をバックに、あたかもその代表格のように振舞っている……といった地元民による見方だ。近年では、讃岐うどん店を応援するファンや有識者でつくる「麺通団」という団体が、ブログで丸亀製麺のそのような姿勢を痛烈に批判し、香川県民をはじめとした讃岐うどんの愛好者から大いに喝采を浴びるという出来事もあった。

確かに丸亀製麺を運営するトリドールは、兵庫県の加古川市が発祥で、丸亀製麺の1号店も加古川市内に出店したというのは、よく知られた話。そのいっぽうで、同じくうどん店を全国にチェーン展開している「はなまるうどん」は高松市内の創業で、吉野家グループに属する前は高松市に本社が所在していた。それゆえに香川県民からは“地元発祥”と認められ、現在同県内に14店舗を展開するなど、地元民からも一定の支持を得ているようだ。

思えば、唐揚げ店が異様に多い大分県中津市ではケンタッキー・フライド・チキンも撤退せざる得なかったという話や、地元チェーンである「ラッキーピエロ」の人気が根強い北海道函館市では、あのマクドナルドですら劣勢に立たされるといった話など、いわゆる“地元店が大手資本の進出を返り討ちにする”といったエピソードが、判官びいきな日本人は大好きである。

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他の県民から“うどん県”と呼ばれることもまんざらでもない香川県民にとっては、上記のケンタッキーやマクドナルドに値するのが、まさに丸亀製麺の存在。そんな“にっくき外敵”を県内からの駆逐することによって、真のうどん好きとしての面目躍如を果たしたい。……そんな茹でたての釜あげよりもアツい“うどん愛”が、香川県民の丸亀製麺に対する冷ややかな視線に繋がっている、ひとつの要因とも言えそうである。

香川からの撤退は“全国制覇”崩壊をも意味する?

このように、多くの香川県民からはいい顔をされない丸亀製麺だが、そのいっぽうで地名を“拝借”された格好の香川県丸亀市とは、非常に密接な関係を築いているようだ。

なんでも、全国の丸亀製麺の店舗に丸亀市のPRポスターを掲出するいっぽうで、丸亀市の公用車には丸亀製麺の広告を有料掲載するなどの協力関係があるといい、また丸亀城の石垣修復のために丸亀製麺店内で募金活動を展開したことも。そもそもトリドールの社長である粟田貴也氏は、“丸亀”の名を広め市の文化観光振興の一助になったとして、市の文化観光大使をこれまで10年以上も務めているというから、もはや抜き差しならない関係だといっても過言ではなさそうである。

さらに丸亀製麺は、香川県民の心情を勘案してか、香川県内には店舗を極力出さない方針で、ましては丸亀市には絶対に出さないと、同市関係者に伝えているとの話もある。そこまで香川県民に対して遠慮しているにもかかわらず、その県民からは容赦ない嫌われっぷりというのは、さすがに可哀そうにも思えてくるところである。

とはいえ、ここまで来れば香川県内からの撤退も秒読みか……という声も聞こえてくるなか、そうもいかない事情も存在する模様だ。というのも、ライバルと目されるはなまるうどんが佐賀県と宮崎県に店舗が存在しないのに対し、丸亀製麺は2011年に沖縄での開店を果たしたことで、うどんチェーンとしては初となる47都道府県への出店を達成。香川県からの撤退は、この全都道府県制覇体制が崩れることも意味するだけあって、社内のモチベーション的にもそれは避けたいといった思惑もあるようだ。

ただ、昨年11月に発表されたトリドールの中期経営計画をみると、21年9月末時点で625店あるという丸亀製麺を含めた海外の自社ブランド店を、6年後の2028年3月期までになんと4,000店まで増やしたいとするなど、頭打ちな国内市場よりも海外に積極攻勢をかけたいという意図がハッキリ。今後さらなるグローバル展開を目指していくなかで、全都道府県出店の維持、ひいては香川県内店舗の死守が優先順位として下がることも無きにしも非ずで、そうなれば香川県民が待ち望む“攘夷”が叶う日が近からず訪れる可能性も大いにありそうだ。

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