ストッキングをはじめとした繊維製品の製造・販売メーカーであるアツギが、その子会社である「アツギ東北」の生産業務終了を決めたという報道が、SNS上で大きな波紋を呼んでいる。
2019年3月期以降の業績において最終赤字が続いていたというアツギ。そのことを受けて、コスト割高などにより採算悪化が続いているアツギ東北での生産を止め、今後は同社グループの中国子会社に生産業務を移管。生産体制の最適化を図るという。
アツギ東北の生産終了日は今年5月31日を予定しているとのこと。現在、アツギ東北には約610名の従業員が在籍しているといい、その処遇は労働組合との協議を経て決定する予定だという。
フェミ側の怒りを買った“ラブタイツ騒動”の影響は?
アツギといえば女性の間では元から知名度は抜群の企業だが、いっぽうで過去にはその社名がネガティブな形で大いに露出してしまう出来事があった。2020年11月に起きた、いわゆる“ラブタイツ騒動”だ。
11月2日のタイツの日に合わせて、30人のイラストレーターによる同社製品を着用した女性のイラストを、ツイッター上で大々的に公開する「#ラブタイツ」というキャンペーンを行ったアツギ。
しかし、それらのイラストの一部に、女性がスカートを持ち上げて足を見せるといった性的なものが含まれていたとして、いわゆるフェミニストの方々が大激怒。「性的消費だ」との猛抗議を受けてキャンペーンは程なくして中止となり、アツギは公式サイト上での謝罪に追い込まれた。
ただ、このような流れに対しては「表現の自由の侵害だ」と異を唱える層も存在し、SNS上では議論が紛糾。後の「戸定梨香」や「温泉むすめ」の騒動でも取沙汰されたが、2次元キャラなどに代表されるオタク文化とフェミニズムとは、まさに水に油で絶望的に相性が悪いことを如実に物語る出来事となったのだ。
そういった背景もあり、今回の報道を受けてSNS上では「オタクが買い支えるんじゃなかったの?」といった揶揄する声が多くあがるなど、過去の対立が再び再燃する格好に。
ストッキングの「アツギ」が国内生産の終了を発表
倫理観がすでに終了していた
ツイフェミさんたちの狂喜乱舞がこちら pic.twitter.com/PksZyIZk8o— さーゆー (@saayuuuuuuuuu) January 20, 2022
アツギがタイツのイラストで炎上してた時馬鹿みたいな面して擁護してた男さんたちもっと頑張って買わなきゃ!www国内生産終了しちゃったやん!!wwwwwwwww
— Day (@akarasamaa_) January 20, 2022
これに対して国内生産終了を喜ぶなんて…とか言ってる表現の自由戦士がいたけどお前らのせいだよ、と言いたいんですよ。お前らがアツギユーザーの女性達に執拗に誹謗中傷しなければ不評だったPRを取り下げただけの話だったのに、無意味な延焼をさせて企業イメージをぶち壊したのは表現の自由戦士だよ。 https://t.co/ecvx1Nhopq
— なゆた (@nayutaaamk_2) January 20, 2022
とはいえ先述の報道にある通り、業績不振自体は騒動以前から続いていたようで、それにくわえコロナ禍による通勤などの外出機会の減少によって、ストッキングの需要が急速に落ち込んだことも大きかったとのこと。先の“ラブタイツ騒動”による企業イメージのダウンが、国内生産終了に直接つながったというわけでは決してないようだ。
地元は「雇用危機」「大打撃」と厳しい受け止め
いっぽう、今回のアツギ東北での生産業務終了の報道によって、激震が走る格好となったのはその拠点である青森県むつ市。
恐山やほたて貝で有名なむつ市だが、実はストッキングの生産量も国内随一ということもあって、同市の宮下宗一郎市長も21日夜中のツイートで「衝撃を受けています」「私も昨日夕方に知りました」と語るなど、そのショックは隠しきれないようだ。
アツギ工場閉鎖のニュースに衝撃を受けています。私も昨日夕方に知りました。これまでの日本全国のコロナ禍の影響をむつ市が一身に受ける事態に。業界のことを考えれば一地域の雇用喪失でなく、国レベルの雇用喪失といえる事態。関係機関と連携して対応していきます。#むつ市 https://t.co/wXWi48DV9Y
— むつ市長公式ツイッター (@mutsurepo) January 20, 2022
東奥日報やRAB青森放送といった地元メディアも、今回の件をこぞって報道している状況だが、そのタイトルには「500人超の雇用喪失か」「最大の雇用危機」といったショッキングな文言が並ぶ。確かに、むつ市自体で人口は5万人ちょっと、周辺自治体を含めても7万5,000人程度の経済圏とあって、そこから500人超の雇用が無くなるというのは、相当に危機的な状況であることは想像に難くない。
アツギがむつに生産会社を設立したのは1966年のことで、当地にはストッキングの染色工程で必要となる質のよい水が豊富にあったことにくわえ、当時は“集団就職”による若者の流出が顕著で、その流れを食い止めるべく地元自治体が熱心に誘致したという経緯もあったとのこと。それ以降、地元経済を支える大きな存在だっただけに、市民からは「割とマジで地元じゃとんでもないニュース」「本当に大打撃」といった危機を訴える声が多くあがる。
アツギむつ事業所、生産終了へ(Web東奥)https://t.co/tZGs3fSPF1
割とマジで地元じゃとんでもないニュースなんですがこれ
— かぶぞん (@dosukoi_company) January 20, 2022
むつ市のアツギ生産終了ってマジでか!?
コレ本当に大打撃じゃないのか?今更中国て…。古くは地区外なのにネブタにも参戦してくれてた位地元に根付いた企業だっただけに何とか考え直して欲しいけれども… https://t.co/tU8PVl8Fhn— ガンバと酒とメタルとタバコ (@aokuroMetal2021) January 20, 2022
むつ市を支えてくれた企業の生産終了は辛い pic.twitter.com/elUL0lgLtj
— ひで (@hinde0831) January 20, 2022
給料が安いから青森でなんとか稼働してたのが、会社が傾いて中国工場に集約するってのが日本の製造業の今の縮図な気がする
アツギむつ事業所、生産終了へ https://t.co/Ho35vPPfcY
— わたり (@ddk121_ygm) January 21, 2022
しかも、その移転先が中国ということで「日本の製造業の縮図」といった声も聞こえてくる今回の件。昨今は“チャイナリスク”も大いに叫ばれているが、そんな最中に中国への生産機能集約を決めたアツギの今後を案ずる声も少なくない状況だ。
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