1月18日、日本航空が米国便の一部を欠航させると発表。米国の空港周辺で5Gサービスが始まると、ボーイング777型機の運行に支障が出る可能性があるとの通知を受けたと理由が説明され、米国内でも多くの路線で欠航が発表されました。この問題の背景をメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』著者でケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんが解説。携帯事業者にとっては高額で落札した周波数帯を想定していたように使えないのは痛手で、6G時代を前に日本でも議論となっている電波オークションに及ぼすであろう影響についても伝えています。
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アメリカ5G周波数で全日空と日航がボーイング777欠航騒動──6G時代に向けて課題となる干渉とオークション問題
アメリカで、ベライゾンとAT&Tが5Gサービスで使用する「Cバンド」がボーイング777の電波高度計に誤作動を起こす可能性があるとして、米国航空当局(FAA)が使用の待ったをかけた。アメリカの航空会社だけにとどまらず、全日本空輸や日本航空もアメリカにボーイング777を飛ばしていることから欠航を余儀なくされた。
その後、ベライゾンとAT&TがCバンドの運用を延期したことから騒動はいったん収まり、ボーイング777の運航が再開された。
Cバンドは世界各国のキャリアでも利用され、日本でも主要なバンドとして位置づけられている。ベライゾンとAT&Tは「Cバンドは世界で利用されており、影響はない」と主張したようだが、両社はエリアカバーを広くとろうと出力を上げて運用したかったようだ。周波数帯は世界と一緒でも「出力が強すぎる」ということでFAAから待ったがかかった。
ベライゾンとAT&Tとしては、T-Mobileと競争していることもあり、一刻も早く運用を行いたいはずだ。ボーイング777に影響が出るかも知れないということで、空港周辺に基地局を増やし、出力を落としたかたちで運用するには時間もコストもかかってしまう。
なんせ、ベライゾンとAT&Tは電波オークションで、この周波数帯を落札して使おうとしている。大金を積んで取得した周波数帯が使えないとなれば、怒りも頂点に達するだろう。
現在、日本でも電波オークションが議論されているが、「割り当てたけど、実は干渉する恐れが出てきたので、使えない」という可能性まで含めてしっかりと検証がされているのだろうか。
国内で利用されている周波数帯はある程度、総務省でも把握ができているはずだ。しかし、今回のように、海外企業であるボーイングの、しかも777という限られた機体で使われている電波高度時計が干渉するかも知れないというところまで認知できているのか。
これから6Gに向けて、すでに割り当てられている周波数帯を移動させたり、共用したりするなどして、新たに周波数帯を割り当てようとしている。5Gの導入時に3.7GHz帯ですら、衛星と通信をしている地球局との干渉を回避するのに手こずり、エリアの拡大に苦労していたのは記憶に新しい。
今後、日本で電波オークションが導入され、周波数帯が出品されても「干渉問題を回避するのにコストがかかる厄介な周波数帯」という評価がされれば、入札するキャリアは出てこない。国際的に普及している周波数帯に加えて「干渉の心配をすることなく、手間暇かけずに使える周波数帯」の価値が上がり、落札価格が高騰するということもあり得そうだ。
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image by:viper-zero/Shutterstock.com