ロシア国営TV乱入「反戦」女性に“フェイク”の疑い。罰金わずか3万円で即釈放の謎、稀代の美談に仕込まれたプロパガンダ

2022.03.16
by たいらひとし
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ロシア国営テレビのニュース番組中突然乱入し、「反戦」のメッセージが書かれた紙を掲げた女性職員が拘束された。 言論統制が強まる中での、危険を顧みない勇気ある行動が反響を呼び、NHKはじめ日本の各メディアでも連日放送された。 しかし、この美談、実は「フェイクニュースなのでは?」と疑いの目を向けられていることがわかった。

「NO WAR」フェイクニュース説を裏付ける確かな証拠

疑問を投げかけたのはウクライナの現状を現地でリポートしているボクダン・パルホメンコ氏。 流ちょうな日本語を操るウクライナ人として日本のテレビにもよく出演しているので、顔なじみの人も多いだろう。

3月15日放送の『関西テレビNEWS』(関西テレビ)で、ボクダン氏は「ロシア国営メディアは元KGBの監視下にあり、生放送であっても8分間の遅れて流れるシステムなので、もし乱入があっても、放送は事前に止められるはずだ」と語った。

実際は途中で制御されることもなく放送され、ロシアのSNSにも拡散された。 ディレイ放送なら当然カットすることができる。そのため、ウクライナ国民はこのニュースをフェイクと疑い、ネガティブにとらえているという。

2004年に起きたオレンジ革命では、現在のロシアと同じようにウクライナにも報道統制が敷かれていたが、報道キャスターが国に反旗を翻して、生放送で民主化を訴えた。

それが軍隊や警察にまでそのメッセージが波及していき、最終的に政権交替に繋がった。 隣国ロシアはその状況をつぶさに見ており、分析研究している。

元KGBのプーチンは民衆の反乱を抑える準備にぬかりがない。 わざと報道局員の反乱を演出し、その後、見せしめとして酷い罰を与える。 あるいはガス抜きとして、民衆の声を代弁させて、国家に対する批判から目を逸らさせる~といったことを考えていてもおかしくはない。

「ノーベル平和賞ものだ!」と手放しで称賛する声にかき消されて、反戦を訴えた女性、オフシャンニコワさんの行動に違和感を持つ人は少ない。

実際はSNSやYouTubeでオフシャンニコワさんの言動に違和感を訴える声があるだけ。もしかしたら、日本のマスメディアもロシアのプロパガンダに騙されているかもしれない。

女性は平和を呼びかけた天使か?ロシア政府の手先か?

自らの危険も顧みず、反戦を訴えたマリーナ・オフシャンニコワさんの姿は世界中の人に感動を与えたが、その後、確かに不可解なニュースが流れてきたのも事実だ。

なぜならモスクワ裁判所が彼女に課した罰金は日本円でわずか3万円。 国営メディアを使って国家に反逆するメッセージを訴えれば、本来、身柄を拘束するだけではすまないだろう。だが、彼女は裁判所を出てすぐにインタビューに答え、平和を訴えた。

ことの真偽は不明だが、もし本当にフェイクならばロシア側の狙いはどこにあるのだろうか?

ロシア国内では厳しく言論統制されているという世界的なイメージをくつがえしたいのか?それともロシア市民も戦争に反対しているから、西側は経済制裁をやめろというメッセージなのか?

オフシャンニコワさんの掲げた紙には「NO WAR」と英語で書かれていたが、ロシア国民へのメッセージならば、わざわざ英語表記にしなくていいはずだ。

疑わしい箇所はここだけではない。 オフシャンニコワさんの夫がTVディレクターとして所属しているのはモスクワのニュース専門局「ロシア・トゥデイ」。

ハフポストでは、「EUはロシア政府がフェイクニュース拡散のために数千人の人員を抱えていると予測している」と報道している。また、フランス大統領選でもマクロン大統領は「ロシア・トゥデイ」 の同性愛疑惑報道に手を焼いたという。

ロシアは国家ぐるみでフェイクニュースを増産している、言わばフェイクのプロだ。 フェイクニュースを大量投入しているロシア、そのすべてを西側諸国が見破るのは不可能なのかもしれない。

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