岸田政権が発足してから半年が経過。新型コロナ対策に加え、ロシアによるウクライナ侵攻など、多くの難題を抱える岸田文雄首相ですが、今のところは「安全運転している」との声が聞かれます。そんな「岸田政権の外交・安保分野を事実上牽引しているのは安倍元首相」と語るのは、元経済誌『プレジデント』編集長で国会議員秘書の経験もある、ITOMOS研究所所長の小倉健一さん。小倉さんは安倍政権よりも“安倍カラー”に染まっているとし、岸田政権の内幕を暴きます。
プロフィール:小倉健一(おぐら・けんいち)
ITOMOS研究所所長。1979年生まれ。京都大学経済学部卒業。国会議員秘書を経てプレジデント社へ入社、プレジデント編集部配属。経済誌としては当時最年少でプレジデント編集長就任(2020年1月)。2021年7月に独立。現在に至る。
岸田首相のタカ派外交を裏で操る人物とは
NHKの世論調査によると、4月現在の支持率は53%と、いまだ高水準の内閣支持率を保つ岸田文雄首相が「タカ派」ぶりを見せている。
元々、「ハト派」の代表格とされてきた首相は伝統的にリベラル色の濃い自民党派閥「宏池会」の第9代会長を務める。だが、いま最も寄り添うのは保守派を代表する安倍晋三元首相だ。
「敵基地攻撃能力」の保有検討を表明するなど戦後日本政治の歩みからの転換を目指す名門派閥のプリンス。彼の身に何が起きているのだろうか。
「いわゆる敵基地攻撃能力も含め、あらゆる選択肢を排除せず現実的に検討し、スピード感をもって防衛力を抜本的に強化していきます」。
昨年12月の所信表明演説で、岸田首相は日本を取り巻く安全保障環境が急速に厳しさを増しているとして、防衛力強化の必要性を強調した。
相手国の領域内にある基地などを攻撃する「敵基地攻撃」が議論になったことは、これまでもある。
だが、戦後の首相として初めて敵基地攻撃能力の保有検討の必要性を明言した岸田氏は、今年1月の施政方針演説でも同様に表明した。
2月18日の衆院予算委員会では「重要なことはミサイル技術が急速なスピードで変化する現状において国民の命や暮らしを守るために何が求められているかだ」と述べている。
保守政治家を代表する安倍氏であれば、同じ言葉を発しても不思議には受け止められないかもしれない。実際、安倍氏は首相在任時に敵基地攻撃能力の保有に意欲を示したことがある。
だが、今日の発信者は憲法9条の平和主義を大切にしてきた名門派閥のトップである。
4年7カ月もの外相経験で外交の要諦に「相手の話を聞く」ことをあげ、被爆地出身の宰相として戦争の悲惨さを語る政治家の変節には「なぜリベラル派の岸田氏が…」と首をかしげる向きは少なくない。