fbpx

ファーウェイ復活か。米国に「消された」スマホ事業で反撃の狼煙、独自OSでiPhoneを時代遅れにする可能性=牧野武文

米国による制裁で「消えた」ファーウェイのスマホですが、ここに来て復活の兆しが見られます。独自のOS「ハーモニー」を作り上げ、同社はウェイボー公式アカウントでは「供給は大幅に改善されました。今年はファーウェイのスマホが帰ってきます」という宣言を行いました。ハーモニーOSとはどのようなもので、どこまで普及する可能性のあるものなのでしょうか。今回は、ハーモニーOSとファーウェイの巻き返しについてご紹介します。(『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』牧野武文)

【関連】中国で「わりかん保険」が大流行。治療費払い渋り防止の斬新な仕組みとは=牧野武文

【関連】中国で「無人タクシー」が日常風景へ。なぜ日本の自動運転技術は勝てない?=牧野武文

※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2022年5月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

ファーウェイスマホに復活の兆し

今回は「ファーウェイ」スマホの復活についてご紹介します。

2021年は、ファーウェイのスマホ事業にとって散々な年となりました。散々というより「消えた」といった方が正確かもしれません。米政府による制裁で、米国企業がファーウェイに特定技術を輸出することを制限したため、Androidのグーグルアプリ群だけでなく、肝心のスマホチップの生産ができなくなりました。

当面は、在庫のチップを使い製造をしていましたが、じゅうぶんではなく、生産ができずに出荷数が落ちていきます。Counterpointなどの出荷統計では、「その他」に含められてしまい、「ファーウェイ」の項目が消えてしまいました。

しかし、ファーウェイのスマホは死んでいません。すぐさまハーモニーOSを発表し、Androidに頼らないスマホ生産を始めました。米政府の制裁のねらいは、大方の予想通り5Gにあったようで、4Gのみ対応のチップであれば米クアルコムから入手でき、それで新製品を発表しています。

そして、4月27日には、ウェイボー公式アカウントで、「供給は大幅に改善されました。今年はファーウェイのスマホが帰ってきます」という宣言を行いました。

ハーモニーOSとはどのようなもので、どこまで普及する可能性のあるものなのでしょうか。

今回は、ハーモニーOSとファーウェイの巻き返しについてご紹介します。

「消えた」ファーウェイのスマホ事業

2021年、最もひどい目に遭った中国テック企業と言えば、ライドシェアの滴滴(ディディ)です。当メルマガの2021年11月配信号「vol.098:なぜ中国政府はテック企業の締め付けを強化するのか。公正な競争とVIEスキーム」でご紹介したように、アプリの配信停止処分を受け、事実上の営業停止となり、大きな打撃を受けました。特に深刻だった2021年第3四半期には、306億元(約6,040億円)の巨額赤字を出し、企業価値は2,800億元(約5.5兆円)も縮小しました。

もうひとつ大きな打撃を受けた企業があります。ファーウェイのスマホ事業です。ファーウェイはスマートフォンだけの会社ではないので、あまり目立ちませんが、スマホ事業は「消えた」と言ってもいいほどです。

Counterpointが発表している出荷台数シェアをみるとはっきりします。中国市場では圧倒的な強さを誇っていました。1強+Nと呼ばれるほどでした。それが2020年になって急落をし、2021年Q2を最後にグラフから消えます。Counterpointのシェアの数値は、上位数社を記載し、数字が小さい場合は「その他」にまとめられてしまいます。つまり、ファーウェイはその他大勢になってしまったのです。
※参考:China Smartphone Market Share: By Quarter: Counterpoint Research(2022年2月15日配信)

同じく世界市場でも、ファーウェイは強いサムスンを追撃するポジションにいましたが、2020年になって急落をします。そして、2021年Q1を最後にグラフから消えます。

このような事態になったのは、米政府の規制というより排除・制裁の影響です。グーグルがGooglePlay、GoogleMap、YouTube、Gmailなどのグーグルアプリ群=GMS(Google Mobile Services)の提供を停止し、それだけでなく、肝心要のチップの供給も受けられなくなり、スマホの製造そのものがほとんどできなくなってしまったのです。

多くのアナリストがファーウェイはスマホ事業を放棄するのではないかと見ました。それも当然です。チップがなければスマホの作りようがありません。

しかし、ファーウェイはあきらめず、スマホ製造を細々と続け、ハーモニーOSという独自OSを引っ提げて巻き返しを図っています。

Next: そもそも「バックドア」問題はなかった?制裁を受けた理由とその後

1 2 3 4 5
いま読まれてます

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

MONEY VOICEの最新情報をお届けします。

この記事が気に入ったらXでMONEY VOICEをフォロー