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「岸田に投資を」の欺瞞。本邦個人金融資産2000兆円の7割を60歳以上が保有、資産所得倍増プランから外される現役世代たち=今市太郎

岸田首相は5月5日、英国の金融街・シティで講演を行い、「Invest in Kishida(岸田に投資を)」と訴えました。この講演で今まで見えなかった「新しい資本主義」が結局はただの「資産所得倍増プラン」であることがわかり、ネット上では辛辣な意見が続々と出ています。日本の個人金融資産の約2,000兆円を「貯蓄から投資へ」と誘導するようですが、その資産のうち7割弱を60歳以上が保有しています。疲弊する中年や若年層はまったく所得が増えず、始まる前からこの政策の失敗が見えている状況です。(『今市的視点 IMAICHI POV』今市太郎)

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※本記事は有料メルマガ『今市的視点 IMAICHI POV』2022年5月7日号の抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め初月分無料のお試し購読をどうぞ。

岸田首相の「資産所得倍増プラン」に辛辣な意見が続々

岸田政権は、昨年の発足時に勢いよく「新しい資本主義」などという耳障りのいい言葉を繰り出したものの、その中身をまったく開示しないまま5月になりました。

ところが、なぜか国民に内容を伝える前に、ロンドンの金融街・シティで講演をした際、そのアウトラインを開示しています。

それによると、日本の個人金融資産の約2,000兆円を「貯蓄から投資へ」と誘導する“資産所得倍増プラン”であるようです。

しかし、この戦略の「どこが所得倍増なのか?」と、かなり辛辣な意見がネット上で飛び交っています。

それもそのはずで、詳細が開示されていない段階でも、今ある情報だけで全然まともにワークしないことが見えてくるからで、今回も懐刀の例の方が考えた内容を丸のみしてロクに精査せずに発表したのでしょうが、具体的な政策が発表されてもまったく期待できない大外れな政策であることが露見し始めています。

本邦金融資産2023兆円の7割弱は60歳以上が保有するという凄まじい現実のズレ

本邦の個人の預金や株式などの金融資産は、昨年末段階で初の2,000兆円超となったとの報道を目にされた方も多いと思います。

その半分以上が現預金で保有されており、過去10年でも、他の先進国と比べてその拡大が限定的であることは厳然たる事実です。

岸田首相はそこに目をつけて、預貯金を資産運用に誘導する仕組みの創設などを通じて、投資による資産所得倍増を実現することが具体的な「新しい資本主義」の骨格であることを示しています。

そもそも個人が持っている預貯金をリスクのある資産で運用させるというのは、うまくいけば確かに資産倍増の可能性もありますが、すべては個人のリスクに基づくもので、国がこうした半ば詐欺的プロモーションを行うのは国内の証券会社でもやらない悪質な手口ということができます。

しかも、常に話題にのぼる2000兆円超の本邦個人資産ですが、この金融資産残高の7割弱を60歳以上が保有しており、ひどく高齢者に資金が偏っていることがわかります。

これは総務省「家計調査」で開示されているデータでも明白で、家計金融資産残高に占める60歳以上の構成比を求めると、68.5%と7割近いことがわかります。

さらに言えば70歳以上40.0%ですから、年金不足額が取り沙汰される高齢者が、国に言われたからといって簡単にリスク金融資産である株などにここから積極投資するとはまったく思えないものがあります。

Next: 若者には投資に回す余剰資金ナシ。そもそも日本株は見向きもされない?

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