文在寅氏が退任し、韓国新大統領に尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が就任した。ご祝儀相場はまったくなく、早々に1,300ウォン目前まで下がるウォン安に見舞われている。これがマーケットの評価ということだろうか。文在寅氏の退任演説と、ユン氏の就任演説から韓国経済の行く末を読み解きたい。(『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』)
※本記事は有料メルマガ『2011年 韓国経済危機の軌跡(週間 韓国経済)』2022年5月13日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
最後まで自画自賛の文在寅大統領
5月10日、韓国大統領に尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が就任した。ユン氏の就任式を中心に特集しながら、1,300ウォンに迫ったウォン安について解説したい。
新大統領が誕生したということは、当然、文在寅氏の退任でもあった。退任演説の内容について、全文を取り上げることは当メルマガではできないので、日本貿易振興機構(ジェトロ)から内容を要約したものを引用する。
・韓国国民は、平昌冬季オリンピックを平和オリンピックとして成功裏に終えた。世界が韓国に熱狂した。
・朝鮮半島情勢においては、朝鮮半島の戦争危機を「対話」と「外交」の局面に転換し、平和と繁栄の新しい朝鮮半島時代への希望をもたらした。
・日本の不当な輸出管理による危機を、国民の団結により克服した。素材・部材・装置産業の自立の機会と捉え、韓国製造業の競争力強化につながった。
・新型コロナウイルス感染症による景気低迷の中で、史上最大の輸出実績をあげることができたのも、製造業が持つ世界的な競争力によるもの。
・新型コロナウイルス感染症を通じ、韓国が世界の防疫模範国家であることを認識した。
・1人当たり国民総所得は3万5,000ドルに達した。韓流文化が新型コロナに苦しむ世界の人々を癒やした。韓国版ニューディールは、デジタル、革新などの先端科学技術分野で韓国を強国に押し上げた。グリーンニューディールとカーボンニュートラル宣言は、気候変動と国際協力で世界をリードする国家に導いた。カーボンニュートラル宣言は、気候変動と国際協力で世界をリードする国家に導いた。
上記のように6つに分かれているが、どれも失敗している。自画自賛しているが、何ひとつ、文在寅氏が韓国経済にとって良い影響を与えたことなどない。
それでも、支持率は最後まで40%あった。あまりにも成果がないになぜなのか?つまり、文在寅大統領は自分の支持者には受けの良い政治をやってきたということだ。
<外交に成果なし>
例えば、演説の冒頭にある「平昌冬季オリンピック」と「朝鮮半島の対話・外交」は北朝鮮関連であり、「平和と繁栄の新しい朝鮮半島時代への希望をもたらした」とあるが、相変わらず北朝鮮は弾道ミサイルをユン氏の就任早々に発射している。
そもそも、文在寅大統領は南北合同連絡事務所を爆破されただろう。蝙蝠外交をしまくって、米国にも北朝鮮にも嘘しか言わないため、トランプ大統領を激怒させている。「希望をもたらした」と言うが、結局、希望なんてどこにもないだろう。
<貿易をめぐり日韓に亀裂>
次に、日本人としては気になる箇所だが、「輸出管理による危機」を克服したそうだ。それなのに、なんで昨年の日韓貿易赤字は260億ドルの赤字に増加したのだろう?簡単なことである。日本の半導体素材の輸入が増えたためだ。韓国の製造力が強化されたなら、貿易赤字が減っていないとダメだろう。
<「K防疫」でコロナ蔓延>
そして、次は文在寅大統領の自慢の「K防疫」だ。最後のK防疫は世界一の新規感染者を3週間連続で出して、死者数も欧米並に増加させてしまった。史上最大の輸出実績についても言及しているが、単なる半導体需要増とコロナ禍の反動である。
<効果が見えない「韓国版ニューディール」>
国民総所得の上昇をアピールしているが、今の1ドル=1,280ウォンというレートでは意味がないのではなかろうか。韓国版ニューディールの成果というのも聞いたことない。
このように突っ込んでいくと、文在寅氏の退任演説はほぼ9割ぐらいが「嘘と自画自賛」である。
しかも、物価上昇&不動産バブルなど5年間の負の遺産が、今の韓国経済危機を深刻化させている。確かに、私は文在寅政権時代の韓国経済をウォッチしてきて、この5年間は最高に楽しませてもらった。韓国民が「負の遺産」の意味を知るのは、まだまだ先である。
さらには、任期の最後にやったことは自分を逮捕させないように検察から政治家への捜査権の剥奪である。保身にかけては天才的だ。