プーチン暴走が引き金に。日本が直面する中国と露と北3正面からの侵攻リスク

2022.05.19
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プーチン大統領のウクライナ侵攻により、またも世界に訪れた戦争の時代。我が国は中国、北朝鮮、そしてロシアという「3正面の脅威」と、どのような姿勢をもって対峙すべきなのでしょうか。今回、その範を台湾に求めるのは、国際政治を熟知するアッズーリ氏。外務省や国連機関とも繋がりを持つアッズーリ氏は、新たに加わったロシアによる北方領土リスクを解説するとともに、日本が真剣に捉えるべき動きとして、蔡英文政権が取る中国の軍事侵攻への備えを紹介しています。

中国、北朝鮮、ロシアの3正面脅威に直面する日本

ロシアによるウクライナ侵攻から2ヶ月が過ぎるなか、欧米諸国はロシアへの警戒を強めている。その警戒は間違いなく冷戦後最大規模で、特に陸でロシアと繋がる欧州は懸念を強めている。最近でも英国国防省は4月下旬、今年夏までに英国陸軍の部隊8,000人あまりを東ヨーロッパに派遣する計画を明らかにした。今年夏までにフィンランドや北マケドニアなど東ヨーロッパ各地で合同軍事演習が実施されるが、英国が8,000人規模を派遣するのは冷戦後最大規模だという。

また、ロシアと国境を接するフィンランドやスウェーデンにおいては北大西洋条約機構(NATO)加盟を求める市民の声が増えていて、両国は今月中にもNATO加盟に向けた申請を行うという。ロシアはフィンランドとスウェーデンのNATO加盟推進は欧州の安全保障を害するものだと強く反発している。

一方、ロシアの脅威は欧州だけではなく、その反対に位置する日本にとっても脅威となり、既にロシアはそれを臭わせる軍事的動きを見せている。たとえば、ロシア国防省は4月中旬、海軍の潜水艦がロシア極東沖の日本海で巡航ミサイルの発射実験を行ったと明らかにした。発射された巡航ミサイルはカリブル(Kalibr)で、ウクライナ侵攻の際にも使用されたという。

また、北方領土の国後島では3月30日に軍事訓練が実施され、根室などからは照明弾らしき光が相次いで確認された。ウクライナ侵攻以前にも、昨年10月にはロシア海軍の駆逐艦など5隻と中国海軍の最新鋭のミサイル駆逐艦5隻が北海道の奥尻島南西から津軽海峡を通過して太平洋に出て、千葉県の犬吠埼沖、伊豆諸島沖、高知県の足摺岬、鹿児島県の大隅海峡を航行して東シナ海に到達した。中露は同月にも極東ウラジオストク沖の日本海で合同軍事演習を実施している。

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ウクライナを巡って欧米とロシアの対立が深まれば深まるほど、ロシアにとって北方領土の戦略的重要性が高まる。これまでプーチン大統領は北方領土の経済開発や軍事拠点化を強化する姿勢を示してきたが、北方領土は米国の軍事的勢力圏を抑える最前線であり(実際、日米安全保障条約第5条により北海道までは米国の対日防衛義務の範囲が及ぶ)、道東や北方領土周辺を巡る日本の安全保障を今後さらに強化する必要があろう。

中国の海洋覇権もあり、近年、日本や米国の優先順位は圧倒的に日本の南方にあったが、今後は日本の北方への比重を高める必要性が出てきた。

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