「米か中か」バイデンが韓国に迫った踏み絵。親米度試す試験に苦悩する新大統領

2022.05.23
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就任以来、初めてとなるアジア歴訪中のアメリカのバイデン大統領。日本を訪れる前にまずは韓国に立ち寄り、就任後半月も経たない尹錫悦大統領と会談しました。そこにはバイデン大統領のどんな狙いがあり、どのようなメッセージを送ったのでしょうか。今回の無料メルマガ『キムチパワー』では韓国在住歴30年を超える日本人著者が、同国最大の日刊紙である朝鮮日報の記事を翻訳する形で、その論説の内容を紹介していきます。

バイデン来韓。半導体4角同盟構築

バイデンが5月20日(金)に韓国にやってきた。朝鮮日報を土台にご紹介したい。

尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領就任後半月も経たないうちに電撃的に行われたバイデン米大統領の訪韓と韓米首脳会談は、70年の歴史の両国同盟が軍事・安保を越えて技術・サプライチェーン同盟へと拡大する信号弾と解釈される。

過去ユギオ(6.25=朝鮮戦争)とベトナム戦争派兵で結んだ血盟関係が半導体・バッテリー・原発など未来核心産業での強力な同盟関係構築に拡散するという意味だ。米・中葛藤の中で前政権のときは「安保は米国、経済は中国」といった曖昧な態度で綱渡りをしていた韓国が、インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)参加宣言と共に己の立場を明確にしたわけだ。

ジョー・バイデン米大統領は20日、尹大統領とともに訪韓初の目的地として京畿道平沢(キョンギド・ピョンテク)の三星(サムソン)電子半導体工場を訪れ、「3ナノウェハー(半導体原料の丸い円板)」にサインをした。

3ナノは三星が今年上半期に世界で初めて量産を控えている最先端技術だ。半導体確保に米国がどれほど力を入れているかを示していると見れよう。

米国は半導体設計分野では世界最高の技術力を持っているが、半導体生産は韓国の三星電子、台湾TSMCに依存している。バイデン大統領は「半導体生産の75%が東アジアで行われている」として、引き続き危機意識を表出してきた。

バイデン大統領は今回の訪問を通じて韓国半導体企業の「米国内生産工場投資拡大」「米国企業に対する半導体優先供給」などを推進し、半導体素材・部品・装備の強者である日本を含め日米韓・台湾につながるいわゆる「半導体4角同盟」構築に速度を上げるものと見られる。

LGエネルギーソリューション・三星SDI・SKオンが中国企業と激しく競争する電気自動車バッテリー市場でも協力が強化されるものと見られる。

米自動車業界のビッグ3のうちGMはLGエンソル、フォードはSKオン、クライスラーを母体としたステランティスは三星SDIと合弁し、米国でバッテリー生産を推進している。

韓国ソジョン大学のパク・チョルワン教授は「電気自動車に対する備えが足りなかった米国完成車メーカーとしては、韓国バッテリー企業の経験と生産能力が必ず必要な状況」とし、「韓国企業が巨大な北米市場を先取りする機会ができた」と述べた。

原発でも両国の協力が強化される。昨年秋、世界的に吹き荒れたエネルギー危機に続き、今年ロシアのウクライナ侵攻で国際エネルギー価格が暴騰する中、再び注目される原発市場で共に恩恵を受けることができるということだ。

KAIST(韓国理工系の総本山的大学)のチョン・ヨンフン教授は「韓国企業は原発建設の経済性において世界最高」とし「ポーランドのように米国が国家間協定を通じて推進する原発事業に私たちが参加する形で協力が可能だろう」と話した。

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