日銀に「物価の番人」の矜持なし。黒田総裁が晒す“政府の番犬”ぶり

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4月の消費者物価指数は昨年4月を2.1%上回り、政府・日銀が目標としてきた上昇率2%を超えたのは、消費税増税の影響を除けば13年7か月ぶりとのことです。しかし、この上昇もエネルギー価格や原材料価格の高騰と急激な円安によるもので、賃金上昇は伴わず国民生活を圧迫するだけとの指摘があります。今回のメルマガ『佐高信の筆刀両断』で評論家の佐高信さんは、「物価の番人」と言われる日銀が円の価値を下げ、金融緩和を継続することを厳しく批判。ナチスにすら抵抗したドイツの中央銀行理事たちの言葉を引き、そんな「矜持」の欠片も見えない黒田総裁を「政府の番犬」と評しています。

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踏みにじられる「物価の番人」

こんな男が長く日本の首相をやっていたなんて、本当に世界に対して恥ずかしくなる。たとえば佐藤優などが、アベノマスクやアベノミクスの失敗を棚に上げて、首相時代の安倍を次のように持ち上げたからだろう。

「いまは非常時だ。新型コロナウィルスの嵐が去るまでは、民主的手続きによって選ばれた最高指導者である安倍晋三首相を断固支持すべきだ。客観的に見て、安倍政権の危機対応は合格点だ」

そして「安倍晋三首相の下で団結しよう」などとゴマをするから、バカがその気になって、「日銀は政府の子会社だ」と非常識極まりない発言をすることになる。中央銀行である日銀は「物価の番人」と言われるが、ボンボンの安倍は、株価は気になっても物価など眼中にないのだろう。

現総裁の黒田東彦は、政府から独立して金融の中立性を確保し、通貨価値の安定を図るどころか、政権の言いなりに金融緩和を繰り返し、円の価値を下げた。そんな黒田は「政府(安倍)の番犬」としか言えないのである。

かつて、ナチス政権が軍備拡張のために無限に軍需手形を発行し、その尻ぬぐいを中央銀行であるライヒス・バンクにさせたのに対して、シャハトやフォッケなど、同バンクの理事たちが職を賭してヒトラーにつぎのような上申書を差し出し、反逆者として弾圧された。

「止まることのない放漫財政政策がどの程度までドイツ経済の生産や貯蓄さらには国民の社会的必要と両立しうるかを政府に指示する意図は、われわれには存在しない。しかしながらこれ以上政府がライヒス・バンクに信用を要求するならば、通貨政策の運営によって通貨価値を保つことはできず、ただちにインフレーションが発生するであろうことを明らかにすることはわれわれの義務である」

ライヒス・バンク総裁のシャハトは、ヒトラーに死刑を宣告されてまで抵抗した。そのドイツの例を踏まえて『小説日本銀行』(角川文庫)を書いた城山三郎は、執筆の動機をこう語っている。

「日本ほど物価がむちゃくちゃに上がる国はないのに、日本銀行は、一体、何をしているかという、ごく庶民的な感情がありますネ。その意味で、日本銀行で本業の、日銀本来の使命、中央銀行としての使命を貫こうとする男を設定した場合、どうなるかということですネ。そこにロマンを感じたのですが、そんな人は日銀にいない、といってやっつけられた。しかし、いたら何も書くことはない。いないからこそ書いたともいえるわけです」

日銀総裁をやった前川春雄は「人間に等級をつける勲章は好まない」として勲一等を辞退した。そんな前川だったら、安倍放言に、静かに、しかし、断固として反対しただろう。

多分、黒田は喜んで勲章をもらう。私なども主張した財政と金融の分離は日銀の大蔵(現財務)省からの独立をめざしていたが、それも今や完全に踏みにじられた。

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image by:Takashi Images/Shutterstock.com

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