プーチン退陣は必至。ロシア「惨めなまでの敗北」の後に待つ不安な国際情勢

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ロシアの軍事侵攻から5月24日で3カ月となるも、未だ先行きが見通せない状況が続くウクライナ紛争。18日にはフィンランドとその隣国スウェーデンがNATOへの加盟申請を行なうなど情勢は目まぐるしく変化していますが、今後この戦争はどのような展開を辿り、そして国際社会はいかなる動きを見せるのでしょうか。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では著者で元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、ウクライナ紛争はまだまだ長期化すると予測。その上で、国際協調の時代はもう戻ってこないとの悲観的な見解を示しています。

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ウクライナ戦争―止められない世界の分断の波

「要衝マリウポリが陥落した」
「アザフスターリ製鉄所に留まっていたアゾフ連隊が、ついに“投降した”」
「いや、任務を終了して退避した」

ウクライナおよび欧米側が伝えるニュースと、ロシア側が伝えるニュースでは、対象は同じでも、伝え方が違えばこれほど受ける感触が違うのかと思わされるエピソードです。

誤解を招く言い方になるかもしれませんが、アゾフ連隊が“投降”したのか、“退避”したのかというポイントは、正直さほど気になりません。

あるのは【アゾフ連隊が製鉄所から去り、ウクライナ南東部の要衝マリウポリがロシア軍によって“完全”掌握された】という事実だけです。

もちろんこれで終わりではなく、ロシアとウクライナ、そしてその背後にいる皆さんによる一進一退の攻防が継続されるのだと思いますが、今週、ついにマリウポリが墜ちたのは、一つ大きな区切りだと考えます。

ロシアとしては、親ロシア派が掌握しているウクライナ東部のドンバス地方からマリウポリを通って、クリミア半島に陸続きでアクセスできる回廊が、一応できたことと、ウクライナがもつ港をことごとく押さえたことは、今後、ウクライナとその背後にいる皆さんの出方に影響を与えることになるでしょう。もちろん、ロシアの出方も。

このまま一気呵成にロシアがウクライナ全土を掌握できるかというと、そうは問屋が卸さないことは明らかですが、ウクライナとNATOによる対ロシア抗戦が激化することで、一層、戦争の長期化が見込まれてしまいます。

泥沼化するが、あくまでも軍同士のにらみ合いと交戦に留まるのか?それとも、まだまだ一般市民を巻き込み、さらなる悲劇の渦を拡げ続け、そしていずれ戦火が周辺に、まるで野火のように広がっていき、収拾のつかない事態がまっているのか?

その答えは分かりませんが、“拡大”を懸念させる事態が今週起きています。

それはこれまで中立の立場を取り続けてきたフィンランドとスウェーデンの同時NATO加盟申請です。

5月18日に両国首脳が揃って申請を行い、19日には日本出発前のバイデン大統領を訪問するためにワシントンDC入りし、今後の対応について協議しています。

ロシアに第2次世界大戦時に領土を奪われ、終戦前に奪還したフィンランドは、終戦後、たまたまナチスドイツに与していたことで罰せられ、結局、ロシアに国土の一部を取られることになりました。その経験は1,300キロにわたる国境線をロシアと共有する国に、生存のため、欧米にもロシアにも与しない、中立の立場を保ってきました。

「いつまたロシアに…」

その思いはフィンランドに核シェルターを作らせ、防衛のための軍を強化し、欧州でも有数の軍事力を備えるに至りました。

スウェーデンについては、中立でありつつも、サーブ社を通じて自国で戦闘機を建造することが出来、かつ最先端兵器を有する非常に強い軍隊をもっていることから、ロシアも容易には攻略できない状況にあります。

これまでロシアと欧米のバッファーとして、戦いを防ぐための砦の役割を果たしてきた両国が、安保政策を根本から変更し、NATO加盟申請を決行するにいたったのは、今後の安全保障および地政学的な意味合いを大きく変えることになります。

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