竹藪なのに庭園のような美しさ!京都向日市「竹の径」のヒミツ

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2022/05/14

京都府向日市にある竹林の散策路「竹の径(みち)」はCMのロケ地や結婚式の前撮りなどに起用されるほどその美しさはお墨付き。訪れる人々を魅了する「竹の径」は、いかにして誕生したのか?秘密を紐解き、見どころや季節のイベント、お立ち寄りスポットとともにご紹介します。

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「竹の径」ってどんなとこ?

今回は、竹のエキスパート(向日市竹産業振興協議会の会長)三島一郎さんに案内していただきました。三島さんは、竹に関する国家資格を3つも有する竹垣職人で、世界遺産や桂離宮などの竹垣も手掛けられてきた名匠なんですよ〜。

「竹の径」とは、北は向日回生病院や京都市洛西竹林公園の周辺から全長約1.8km続く竹林の散策路のことです。竹林とともに「竹穂垣」、「かぐや垣」など8種類の竹垣が続きます(Google mapでは「西ノ岡竹林通」と表示されています)。

「竹穂垣」竹の枝を束ねたスタンダードな竹垣
「かぐや垣」

一般道なので自動車で通ることもできますが、歩いて巡るのがおすすめ(京都市洛西竹林公園のコインパーキングに駐車可)。

竹が風で擦れる音や鳥のさえずりは、癒し効果抜群。森林浴ならぬ竹林浴!!で、清々しい空気に浸って安らぎのひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

竹藪なのに庭園のような美しさなのはどうして?

「竹の径」の青々とした竹林は庭園と見紛うばかりの美しさ。実はこのほとんどが「たけのこ畑(ばた)」。専門農家さんが伝統的な土づくりの作業を毎年繰り返して作り上げたものなんですよ。

向日市北西部の丘陵に位置する「竹の径」沿いで、京のブランド産品「京たけのこ」が栽培されています。

「たけのこ畑があるのは京都だけなんですよ。GWがたけのこ掘りのピークとなり農家さんたちは大忙し。乙訓(おとくに)エリア〈向日市・長岡京市・大山崎町〉特有の形をした鍬(くわ)を使ってたけのこ掘りをしています。ぜひその風景を竹垣の外からぜひご覧くださいね」(三島さん)


竹垣の中は立ち入り禁止

【コラム】京のブランド産品「京たけのこ」の豆知識

鎌倉時代に中国から、食用たけのこである「孟宗竹」がここ乙訓に伝来しました。以来、京の食文化として根付き、現在は京のブランド産品に認定、東京や京都などの有名料亭でも使用されています。もちろん乙訓エリアでいただくこともできます!

京たけのこは、竹林に自生するたけのことは全く別物。別名「白子(しろこ)たけのこ」と呼ばれるほどの色の白さや、刺身にできるほどのやわらかさが自慢で、甘みのある独特の風味を併せ持つ最高級品です。

ちなみに、日本の栽培竹林面積の9割を占める三大有用竹はこの3種類。左から、真竹(まだけ)、淡竹(はちく)、孟宗竹(もうそうちく)。日本人がイメージする竹といえば、真竹で、工芸品にもっとも多く使われるのがこちら。

農家さん専用のたけのこ畑への出入り口となる門

日本最古の物語と伝わる「竹取物語」発祥地の一つとされる、乙訓エリア。平安時代には⼄訓産の箸竹が朝廷に献上されていたという記録が残っており、乙訓の竹は茶道や⽵⼯芸といった日本の伝統⽂化を約1100年にわたり支えてきたといえます。


ここにしかない竹垣!職人の知恵と技が光るオリジナルデザイン

向日市由来のネーミングを冠した竹垣が続く。こちらは無限に波打つ海の道をイメージした「海道垣」

この美しい景観を生み出しているもう一つの秘密が、竹垣です。もともとこの辺りは不法投棄が多かった場所でした。そこで今から約20年前、この問題を解決するために考えたのが竹垣でした。

「美しい竹垣を作って景観を整備したらゴミを捨てる人はいなくなるんじゃないかと」(三島さん)

かぐや姫の着る十二単衣をイメージしてつくられた「かぐや垣」。竹筒と竹穂の組み合わせが珍しい

向日市から依頼を受けて、竹産業に携わる6つの業者で構成された向日市竹産業振興協議会が竹垣を整備しました。当初は竹穂垣500mからスタートし、徐々に竹垣の種類を増やして、距離も延ばして今では1.8kmに。不法投棄は激減し、たけのこ農家さんたちもとても喜んでおられるそうです!

地元・深田川のキラキラとした水面を竹垣で表現した「深田垣」

「実はこれらすべての竹垣が廃材を生かして作ったものなんですよ。京たけのこを栽培する際に出た廃材を農家さんから提供してもらっています。農家さんたちとも連携して20年以上前からSDGsを実践しています」(三島さん)

竹の径の見どころのひとつ、全長98mの寺戸大塚古墳は、向日丘陵に遺る数少ない前方後円墳。「古墳垣」はアーチ型のため、高度な竹の加工技術が必要となる

本来、寺院などにある竹垣は真竹で作られているのですが、こちらの竹垣の材料は食用の孟宗竹がメイン。さらに、デザインも名前もオリジナルのものがほとんど。向日市の「竹の径」でしか出合えない景観がここにあります。

寺戸垣。結び目の位置や格子の間隔など細部にわたり職人技が生かされる

最近、有名寺院でもメンテナンスの負担が少ないプラスチック製の青い竹垣を導入するところも増えつつあります。竹って青々とした青竹のイメージが強いかもしれませんが、日が経つにつれ色味が変化していくところも味があるんですよ。

「青い竹が朽ちていく姿は侘び寂びを感じられてとてもいい。まさに日本人のDNAに訴えかける美です。そういうところにもぜひ着目して巡っていただきたいですね」(三島さん)

竹の径では、年に一度、傷みの多い場所を中心にメンテナンスを行なっているそう。(1月~3月の毎週火・水・木)美観を作り出す職人たちの伝統技術を用いた作業風景は一見の価値ありです。

竹の表面を縦横に組み、竹本来の美しさが味わえる「物集女(もずめ)垣」

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