ウクライナの次は「あの国」か。激怒の米国民を鎮めたいバイデンが打つ大博打

rizi20220524
 

昨年1月の就任後初めて訪日し、24日に行われたQUAD首脳会合で改めて中国を包囲する姿勢を鮮明にしたバイデン大統領。しかし現在の国際情勢を鑑みた時、ウクライナ紛争の停戦こそが優先されるべきなのではないでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では米国在住作家の冷泉彰彦さんが、バイデン大統領の中国包囲政策の継続を「完全に古い」としてその理由を解説。さらにこのままアメリカがウクライナ和平に踏み込まずにいれば、中国による大逆転打で日米は政治的惨敗を喫するとの見立を記しています。

※本記事は有料メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』2022年5月24日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

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バイデンのQUAD戦略は、危険な罠ではないのか?

今回5月22日から24日のバイデン来日では、日米首脳会談だけでなく、QUAD、つまり「日本、アメリカ、オーストラリア、インド」の首脳が集まっての協議も行われます。

この協議のストーリーについては、先週のこの欄で次のような「仮説」を提示してみました。同じ仮説については、「Newsweek」にも書いたのですが、要点は以下の通りです。

1)バイデン政権は支持率低迷で危険水域に。問題は激しいインフレによる国民の怒り。

2)インフレの原因は、原油高(ウクライナ危機による)、物流危機(米中間のコミュニケーション不足による)、生産トラブル(上海ロックダウンなどによる)の3点が主で、問題の沈静化にはこの2つの解決が必要。

3)一方で、中国では「共同富裕」を掲げて、中国企業の西側での上場禁止や、過度に成功した企業への取り締まりを行うなど、習近平による自由経済への規制+ゼロコロナ戦略が破綻しつつあり、李克強首相派に勢い。

4)そこで、バイデンは自身の政治的延命のためには、中国の李首相派を秘密裏に支援して、中国が自由経済への復帰と、ウィズコロナに舵を切らせるのが必須の政策。

5)更に、中国はロシア制裁に中立であったがゆえに、また、ウクライナの同盟国でもあったために、現在でもウクライナとロシアの仲介という点では、理想的なポジションにいる。そこで、バイデンは、李首相派による停戦仲介を推進する。

6)その場合は、プーチンは退陣のみで逮捕はなし、ウクライナの復興は中国が資金提供という条件となり、バイデンはこれを呑む。欧州は大歓迎。

7)フィンランドとスウェーデンのNATO入りは、「取り下げてロシアを和平に同意させる」ための条件面での仕掛けであり、結果的には取り下げに。

8)中国がウィズコロナに転じると、経済は回るが、抗体総量の少ない(薄い)中国の巨大人口には大きな被害が出る可能性あり。そこで、バイデンはmRNAワクチンのノウハウ供与に同意。中国はメンツを捨てて、シノバックから乗り換え。但し、患者・死者は増えるので、政権は持たない。結果的に、習近平=李克強は2期10年で一緒に引退。執行部は若返る。

9)中国の次期指導部は、第6世代になり、改めて寡頭政治+自由経済+中程度の覇権主義で、経済の再度の拡大を図る。これは中国にとっての短期・中期シナリオとしてはベストで、日本はその「トリクルダウン」に甘んじていると、経済的には飲み込まれてしまう。産業構造改革の加速が必須に。

というシナリオです。このシナリオには一定程度の整合性があり、中国の側にはそのような兆候が出ているように思います。ですが、さて、今回のバイデン来日ではどうかというと、現時点では、この「逆転のシナリオ」については、気配すら見えません。

【関連】米中が手を組みウクライナ停戦?バイデンが水面下で進める仰天シナリオ

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