昨今の電力不足を受けて実施が取沙汰されていた「節電ポイント」に関して、松野官房長官が2,000円相当のポイントの付与を8月中に開始する方針を明らかにした。
報道によると、28日の記者会見で松野官房長官は「電力会社の提供する節電プログラムに参加する家庭に向け、2,000円相当のポイントの付与を8月中に始める」と発言。ただ、詳細に関しては触れず、また経済産業省などで検討中の模様だ。
いっぽうで松野官房長官は、政府としては火力発電所の再稼働など、供給サイドの対応に努めていると述べ、「熱中症を回避するために、エアコンを適切に利用することが大事で、無理な節電はお願いしていない」と強調している。
電力が最も逼迫すると予測の7月中には間に合わず
今年の夏は、1月にトンガの海底火山で大規模な噴火が発生したこともあり、冷夏になるのではという見方も一部からはあがっていたのだが、蓋を開けてみれば、まだ7月にも入っていないのに各地で早々と梅雨が明け、猛暑日となる地点が続出。東京電力の管内では、電力需給が厳しいとして「電力需給ひっ迫注意報」が連日出され、できる限りの節電を行うよう求める事態となっている。
いっぽうで電力各社も、補修点検のために停止している火力発電所などの復旧を急いでいるといい、東電管内では今月28日~7月15日の間に計17か所の火力発電所と水力発電所が運転を再開する予定だという。ただ、これらのなかには老朽化した火力発電所なども含まれており、トラブルのリスクもあるとのことで、今後も電力需給を巡る綱渡りの状態は、猛暑が続く向こう2か月は続くのではとみられている。
そんな状況を受けて、政府が導入を急いでいるのが今回の節電に応じたポイント還元だが、前年と比べて節電した家庭などにポイントを還元するといったシステムを想定しているとされたことから「日頃から節電に励む人ほど不利になるのでは」という意見が飛び出すなど、早々とその効果のほどを疑問視する声が。
さらに今回報道された内容によると、節電によるポイント付与は8月から始めるということで、今夏最も電力需給が逼迫するものと予測されている7月には間に合わないことが確定。これに対しては「肝心な時期に間に合わないなんて…」との批判の声が高まっている状況だ。
また、2000円相当のポイントで付与は一回限りという渋チンぶりや、毎度毎度のことながら何故現金ではなくポイントなのかという点にも批判が殺到。実際の手続きが煩雑になることも想定されるということで、そういったことからも実際の効果のほどを疑問視する声が改めてあがっているところだ。
節電プログラムのポイント付与、たった2000円相当だって…。
しかも一度きり!
どうしていつも現金ではなくポイントなの?
しょぼすぎー!コロナ禍、物価高騰で国民が困ってるんだから一律10万円を現金給付すべし!!#節電プログラム https://t.co/wydSY81gLm
— NH (@nh_tako) June 28, 2022
どんな問題もポイント制度で対応できると言わんばかりの日本政府の考え方は本当に理解に苦しみます。節電はとても重要な問題ですが、他により良い対応方法があるのでは?
ポイント制度を作って運営するにはかなりの予算と人員を必要とします。/1 https://t.co/a24i1S9924— ロッシェル・カップ (@JICRochelle) June 28, 2022
事前確認も含めてポイントプログラムへの登録、使いたいポイントへの交換手続きの手間を考えたら、そこまでして受け取るのは無駄な気がするんですよね…。
政府の節電ポイント、参加する家庭にまず2000円相当を付与へ https://t.co/G9pmhg1i3j
— ヤマガタミツル (@point_d_ironie) June 28, 2022
冬のさらなる電力逼迫時には計画停電も視野に?
いっぽうで、電力不足に関しては今夏ではなく、むしろその先の冬がより厳しい状況になるとの見方もある。
経済産業省が今年4月に公表した見通しによると、2022年度の冬が10年に1度の厳寒になると仮定した場合、東京電力管内で23年1~2月に、需要に対する電力の供給余力を示す「予備率」がマイナスとなり、電力が足りない状態に陥る可能性があるとのこと。
予備率3%を下回ると大規模停電を引き起こす恐れがあるということだが、東電以外の電力会社も同様の条件だと3%を下回る見通しだといい、全国的に電力確保に苦労する状態が続きそうだというのだ。
そのような見通しに対して政府は、今冬に大規模停電の恐れが高まった場合には、大企業などを対象に、違反すれば罰金が科される強制的な措置である「電気使用制限」の発令を検討しているとのこと。さらに一般家庭などの節電が不十分な場合には、必要に応じて計画停電も円滑に発動できるように、準備を進めていると報じられている。
昨今の電力逼迫の問題は、コロナ禍やウクライナ侵攻の長期化などが要因ともされているが、そのいっぽうでここ十数年来のエネルギー政策の失敗に大元の原因があるとの見方も多数。にもかかわらず、国民や企業にただただ節電を強いる方向で、この難局を乗り切ろうとしている政府の無為無策ぶりに対して、不満は高まるばかりといった状況だ。
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