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30年ぶり賃上げがもたらす最悪の格差社会。恩恵のない弱者と年金生活者は物価上昇で火の車=斎藤満

日本の賃金が30年ぶりの引き上げモードに入っています。ユニクロのファーストリテイリングは年収の最大40%増、人件費全体で15%増を打ち出しました。これは周辺企業にも影響が見込まれています。30年間なかったことが起こるだけに、多くの変化が予想されます。その光と影を追ってみます。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)※この記事は音声でもお聞きいただけます。

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※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年1月13日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

日本の年収、30年で40万円減

日本の賃金がこの30年間まったく増えず、実質賃金は低下傾向にあることは、OECD(経済協力開発機構)の調査などで明らかにされています。

主要国との比較でみると、この間賃金がまったく増えていないのは日本だけで、その異常さが浮き彫りされています。これは国税庁の「民間給与実態調査」でも確認されます。

国税庁のデータによると、最新令和3年の民間給与は年収ベースで433万円となっています。同調査の30年前、つまり1991年の平均年収は471万円でした。この30年で40万円近く減少したことになります。

実際、年収のピークは1992年の472万円で、その後は減少傾向にあり、2014年に419万円で最低値を付けています。

その後2021年の433万円まで14万円増加しましたが、これは所得水準の平均値を下げてきた女性の給与水準や非正規労働者の水準が引き上げられたことによります。

企業は最大のコストにあたる人件費を抑えることで、販売価格を抑え、競争力を維持してきましたが、最近の人手不足、消費の長期低迷の形でしっぺ返しを受けるようになりました。

国際比較はドルベースでなされ、91年から2014年までは円金額で減少傾向にあったものの、この間の円高でドルベースではほぼ横ばいとなりました。逆に2014年から21年にかけて円ベースでは年収で14万円増えましたが、この間為替は円安となったため、ドルベ─スではむしろ減少、30年間ドルベースではまったく増えない形となりました。

経営側の姿勢が変化

それがここへきて大きな変化が見られます。

政府の賃上げ要請自体は安倍政権のころと変わらないのですが、産業界の受け止め方が変わりました。経団連をはじめ、多くの企業団体が物価高をカバーできる賃上げの必要性を認めています。

背後には物価高で生活者としての労働者の実質賃金が減少し、生活を圧迫していることが回りまわって企業の需要にも影響していることと、人手不足の深刻化があります。

このため、産業界からは定昇込みで6%前後の賃上げに向かう動きとなっていて、組合側の代表、連合の5%賃上げ要求よりも経営側がむしろ高い賃上げを考えています。

日本の組合が経営配慮の「御用組合」になっていることは知られていますが、労組の交渉で賃上げに向かう力は日本では小さく、企業の認識変化に多くを依存していることが明らかにされました。

Next: 岸田政権で株価は上昇サイクルへ?賃上げで格差拡大も

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