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アップルを苦しめる“脱中国化”の意外な盲点。韓国サムスンが成功し、アップルが苦戦する理由とは?=牧野武文

これまでアップル製品の部材の多くは、中国フォクスコンが製造していました。しかし、近年の世界企業の脱中国化の流れを受け、アップルも中国への依存から抜け出そうとしております。しかし、現時点では成功しているとはいえません。そこにはアップルブランドを維持するための苦悩が見て取れます。(『 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード 』牧野武文)

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※本記事は有料メルマガ『知らなかった!中国ITを深く理解するためのキーワード』2023年1月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:牧野武文(まきの たけふみ)
ITジャーナリスト、フリーライター。著書に『Googleの正体』『論語なう』『任天堂ノスタルジー横井軍平とその時代』など。中国のIT事情を解説するブログ「中華IT最新事情」の発行人を務める。

“脱中国化”を図るアップル

みなさん、こんにちは!ITジャーナリストの牧野武文です。

今回は、アップルの脱中国化ついてご紹介します。

アップル製品の多くが、中国フォクスコンにより製造されているということはよく知られています。しかし、その中国が米中デカップリング政策やコロナ禍に揺れ、アップル製品の出荷が滞っていることもたびたび報道されます。

アップルは、2010年代中頃から脱中国化というよりも、各市場で販売する製品はその地域の生産拠点で生産する地産地消化を進めています。現在、米国、EU、中国がアップルの大きな市場で、生産拠点もこの3地域に集中をしています。米国とEUに関しては生産拠点が多くないため、不足する分を中国から供給しているという図式です。

ところが、インド、EU、米国などが保護主義的な関税をかけ始めるようになっています。自由貿易の考え方には反することですが、各国とも自国産業を保護するために関税をかけていき、利益の一致する国とは個別に戦略的に自由貿易協定を結ぶという体制になりつつあります。

この中で、経済大国となってきた中国は孤立をする傾向にあり、特に米国は中国に対して制裁関税をかけています。世界の工場だった中国で製品を製造すると、販売地域に移転する際に多額の関税を支払わなければならなくなりつつあるのです。

これにより、アップルはますます地産地消を加速させています。現在、インドとベトナムでの生産が始まっていますが、いったいどの程度進捗しているのでしょうか。

今回は、アップルが進める脱中国化の現状と、アップル自身が抱える課題についてご紹介します。

アップルサプライヤーという名誉

初期のiPhoneには、背面に「Designed by Apple in California, Assembled in China」(カリフォルニアのアップルにより設計、中国で組立て)という文字が刻印されていました。この刻印を見て、個人投資家となっていた雷軍(レイ・ジュン)が「こんな素晴らしいスマートフォンを中国でもつくれるのだ」と感動して、小米(シャオミ)の創業を決意したのは有名な話です。

現在でも、iPhoneは中国を中心に生産されていますが、製造工場は他国にも広がっています。そのため、アップルはこの刻印をやめ、公式サイトなどでは「Designed by Apple in California, Made by People Everywhere」(世界中の人々によって製造)という言葉を使うようになっています。

アップルは、毎年、部品供給や組立てを行う企業(サプライヤーリスト)を公開しています(https://www.apple.com/jp/supplier-responsibility/)。このアップルのサプライヤーになることは、製造企業にとって、これ以上ない名誉なことです。生産品の品質が高いことがアップルに認められたということだからです。

アップルはサプライヤーに対して、工場の設備、環境対策、労働問題などを高い水準で求めています。どのようなことをサプライヤーに求めているかも、「サプライヤー行動規範とサプライヤー責任基準」という文書で公開されています。つまり、アップルのサプライヤーであるということは、高い品質の製品をつくり、環境にも配慮し、従業員の人権や健康を守る先進的な企業であるということになるのです。

Next: 日本の中堅企業にやって来たアップルから突然の連絡

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