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続出する太陽光発電所「銅線ケーブル」盗難。施設の詳細をサイト公開&防犯対策が後手後手な自治体運営の施設が格好のターゲットに?

自治体が運営するメガソーラー(大規模太陽光発電施設)で、送電用の銅線ケーブルが盗難に遭う被害が相次いでいると報じられている。

山梨県北杜市にある市営の「北杜サイト太陽光発電所」では、昨年12月に連続して侵入され、地下に埋められたケーブルが盗難。全面復旧は今年8月以降になる予定で、それにより失った収入は3,000万円近くになると見られている。

自治体が運営する太陽光発電所は、設置や運営に公金が使われていることから、ホームページなどで詳細が公表されているが、窃盗団側からすればこれによりケーブルの埋設規模が容易に推定できるとされ、盗難被害に繋がっているという見方もあるようだ。

銅線以外にも蛇口やガードレールの盗難も続出

ロンドン金属取引所の銅価格の推移をみてみると、2004年頃まではほとんど横ばいで推移していたものが、それ以降に急上昇し、2~3年という短期間で約3倍ほどにまで高騰することに。

銅線の盗難といえば、とある男女ダンスボーカルユニットの元メンバーで、某アイドルの弟だという人物が、工事現場から大量の銅線を盗んで逮捕されたという過去の事件が印象的、といった方もいるかもしれないが、それが起こったのも2007年と、ちょうど銅価格の高騰が叫ばれていた時期だ。

その後も多少の上下を繰り返していた銅価格だが、近年では再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の導入拡大によって、再び銅の需要が増している状況で、その反面ではコロナ禍による銅鉱山の閉鎖で、供給が減っていることもあり、価格はさらなる上昇ムードとなっているところだ。

そういった背景が、相次ぐ銅の盗難といった状況を生み出しているようだが、ターゲットは太陽光発電所の銅線ケーブルだけでなく、なんと公園や団地などに設置されている水道の“蛇口”にまで及んでいる模様。

というのも、蛇口の素材の大部分を占める真鍮には銅が多く含まれているからで、2021年には滋賀県にある文化財の収蔵庫で盗難事件が発生したものの、文化財にはまったく目をくれず、洗面台の蛇口だけを強奪していくというケースもあったという。

さらに、最近では銅だけでなく鉄も盗難のターゲットに。コロナ禍で全国的に解体工事などが遅れ、サイクル市場に出回る鉄の量が減っていることで、鉄スクラップの価格が大幅に上昇しているのがその背景とされ、なかでも道路の側溝を覆う格子状のグレーチングの盗難が全国的に起こっているといった状況だ。

また鉄目当てだと、道路に設置されたガードレールも盗難の被害に。とはいっても、ガードレール全体を盗むのは骨が折れ、さらに持ち出した際に悪目立ちすることも考えられることからか、ガードレールの端に取り付ける湾曲した「袖ビーム」と呼ばれる部材を盗むのが、ある種のトレンドとなっているようだ。

いっぽうで、銅や鉄などの金属くずの売買に関しては、いわゆる「古物商」の範疇から除外されており、盗品の売買を防ぐための条例を定めている自治体も存在するものの、わずかにとどまるという。そのためか買取業者も「買い取りに際し身分証なども不要」といった対応をするところも多いといい、盗難品でも比較的簡単に売れるという状況のようだ。

盗難事件発生後に防犯カメラを設置

いっぽうで、今回取沙汰されている太陽光発電所の銅線ケーブルを狙った盗難だが、過去にそれで捕まった犯人の供述によれば「太陽光発電所は人気がなく、発覚リスクが少ない」とのこと。人里から離れた屋外に設置された施設も多いということで、物音を少々立てても気づかれることが無いということだ。

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それでいて太陽光発電所のなかには、防犯対策がさほど施されていない施設もまだまだ多いというのが実情のよう。実際、群馬県内にある自治体が経営する太陽光発電所でも、2022年に銅線ケーブル2,400メートル余り、重さにして約7トン(1,300万円相当)を盗まれるという、大きな被害に遭ったというが、事件発生後に防犯カメラの設置などを進める方針を定めたようで、まさに後手後手の対応になっている印象である。

いっぽう、銅製だから盗まれるということで、銅と比べて安価なアルミを用いたケーブルを太陽光発電所で採用する動きもあるようだが、導電率が銅よりも低いため、従来の銅製ケーブルよりもサイズアップが必要な点、さらに法令で直流高圧ケーブルは銅製のものを用いることが定められており、アルミ製ケーブルの使用シーンは限定的になるというデメリットもあるようだ。

先述の群馬県内にある太陽光発電所の担当者も「警備を強化しても侵入されることもある。どこまで対策を取ればいいか難しい面はある」と語るなど、頻発する盗難被害に対して今のところ有効な対策は見当たらず、まさにお手上げといった状況。銅相場の大幅な下落、あるいは金属くずの売買のルールの厳格化など無い限り、今後もこういった被害が続出するのは避けられないようだ。

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