ドル表示の日本のGDPは22年で4兆3,000億ドル(IMF試算)で、世界3位の地位が脅かされ、ドイツにまた追い抜かれそうです。低インフレと円安も大きな要素ですが、日本の成長をけん引し、所得を生み出すリーダー産業が出てこないことも大きな要素です。(『 マンさんの経済あらかると マンさんの経済あらかると 』斎藤満)
※有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2023年2月20日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。
ドイツに抜かれる
この10年で日本経済の地盤が沈下したことは 当メルマガ 当メルマガ で紹介していますが、ドル表示の日本のGDPは22年で4兆3,000億ドル(IMF試算)で、世界3位の地位が脅かされ、ドイツにまた追い抜かれそうです。
そして1人当たりGDPでは21年で世界27位ですが、こちらは韓国にも抜かれかねない状況となっています。低インフレと円安も大きな要素ですが、日本の成長をけん引し、所得を生み出すリーダー産業が出てこないことも大きな要素です。
岸田政権は23年度からの5か年で43兆円の防衛費を予定していますが、これに28年度以降にローンで払う分16.5兆円を加えると、実際は60兆円にもなんなんとする膨大な予算となります。これは米国の軍事産業の需要になるだけで、日本経済の地盤沈下を考えると、これは将来的に大きな負担となります。
そうなる前に経済体力の強化が不可欠で、成長産業を育成することが急務です。
製造立国でドイツに遅れ
日本とドイツは国土の大きさがあまり変わらないうえに、ともに製造業の強さで持っていたことも共通し、特に自動車が強く、いずれも自動車王国を自負する米国に睨まれていました。
米国のEV戦略はいわば新興自動車立国の日本、ドイツを追い落とすための戦略ともいわれます。
ドイツはこところロシアからのエネルギー依存や、貿易面で中国のウエイトが高いために、経済への負担が大きく、昨年もユーロ圏の中でも特に厳しい状況にありました。
しかし、そのドイツに対しても、日本はさらに劣勢にあり、IMFの試算によれば、昨年の日本のGDPは4挑3千億ドルと、前年の4兆9千億ドル余から大きく縮小し、21年のドイツの水準と変わらなくなりました。
ともに製造業立国とされる中で、日本は製造業の約2割を占める自動車業界が、半導体など部品調達の制約もあって、十分に生産や輸出できず、生産輸出全体を圧迫していました。なかでも自動車のEV対応では日独に大きな差が見られます。