家電量販大手の「ヤマダデンキ」の一部店舗が、大阪府枚方市が実施している省エネ家電への買い換えを促進するための補助金を巡り、客に“不正請求”を促していたことが判明した。
報道によれば、この省エネ補助金は枚方市内の店舗での購入が交付条件となっていたのだが、ヤマダ側は近隣の高槻市と寝屋川市の店舗で購入した客に対し、枚方店の店名が入った手書きの領収書を用意し、これに差し替えて請求するようにと案内したという。
市の調査によると、このような手法による不正請求が計31件確認されたといい、このうち15件には計44万円の補助金が交付されたという。
添付不要の保証書に市外店舗の名前がバッチリと
枚方市が2022年12月1日~23年3月6日にかけて行っていたという「令和4年度省エネ家電買い換え促進事業補助金」の交付。
具体的には、対象となる省エネ基準に達したエアコン・冷蔵庫・テレビの購入額が合計15万円以上で一律3万円、10万~15万円で2万円、5~10万円で1万円の補助が出ていたようだが、枚方市の調査によれば、今回不正に補助金が交付されてしまった15件・計44万円分は、3万円が14件に2万円が1件という内訳だったといい、皆さんこのお得な機会を逃さずガッツリと買い物をしていかれたようである。
そんな“不正”を主導したとされるヤマダの枚方店、正式名称「テックランドニトリモールNew枚方店」だが、その立地は枚方市内の北東部ということで、京都府との境界もごく近いといった場所。
すなわち枚方市民のなかでも、この枚方店ではなく近隣の大阪府高槻市や寝屋川市、さらに京都府八幡市にあるヤマダの店舗のほうが、アクセスが良いという者は多く存在するため、今回の件はそういった顧客に対し、ヤマダ側がある意味で便宜を図ってあげたとも考えられそうなのだ。
とはいえ、そういった事情はあったかもしれないとしても、今回のことは枚方市民の税金を原資にした補助金事業であるだけに、市外で買ったものを市内のものだと偽って請求するというのは、ルール違反もいいところというのは言うまでもないことである。
いっぽう、なぜ今回の不正が発覚したのかというと、どうやら市民の一部が申請の際に“長期無料保証”の保証書を、不必要にもかかわらず添付したのがきっかけだということ。そこには、実際に購入した市外店舗の店名がバッチリと書かれていたといい、さしもの枚方市側も「おかしい?」と気付いたようなのだ。
これから推測するに市民側には、これら一連の行為を“不正”“いけないこと”だとは特に考えず、ヤマダ側に促されるまま市に請求した者らもかなり多そうなわけだが、それが結果的には市民を不正請求に手を染めさせるという格好に。この点に関しては、ヤマダは相当に罪深いことをしたと言えそうである。
ヤマダが責任を取り“第三者弁済”で市に全額返済へ
今回の件に関してヤマダ側だが、一部メディアの取材に応えて「一部の管理職が『近隣店舗で購入しても補助金を請求できる』と勘違い」「不正の認識はなかった」と、過去の別の案件で何度も聞いたことのあるようなコメントをしているところ。
とはいえ、このところは折しもビッグモーターによる保険金の不正請求にくわえ、ちょっと前には近畿日本ツーリストが新型コロナウイルスワクチンの業務委託費を過大請求した件も取沙汰されていたとあり、「ヤマダデンキおまえもか」「企業モラルも地に落ちた」などと、ヤマダ側を大いに責める声も当然多くあがっているようだ。
「ヤマダデンキおまえもか」?
ビッグモーターの不正請求問題の解明が待たれる中で、ヤマダが「省エネ家電買い換え補助金請求」で客を誘導する不正。
今年は「近ツーのコロナ委託業務の不正」に始まり「ビッグモーターの不正請求」そしてヤマダ。企業モラルも地に落ちた。 pic.twitter.com/3LMB764emS— 芭蕉の隣人 (@Mb6zdtc5yITsg6N) July 27, 2023
いっぽう、不正に交付されてしまった計44万円の補助金だが、本来なら不正請求を行い交付を受けた市民側が返済するのがしかるべきところなのだが、ヤマダ側は市民に不正な手続きを促したことの責任を取り、“第三者弁済”という形で同社から市に全額を返還する形となった模様。
確かに、先述の通り交付を受けた市民のなかには、まさか自分が不正請求を行っているとはゆめゆめ思っていない者も多そうで、そんな市民らへと返還請求が行く事態となれば、ヤマダの同地域での信用は丸つぶれなうえ、なかには「騙された!」といわんばかりに、市民らがヤマダ側を訴える流れも考えられなくもないだけに、これはこれで賢明な判断といえそうである。
ちなみに枚方市では、今回問題となったものと同様の補助金給付事業を、来月14日から再び始めるということなのだが、流石に今年度は市側も「より厳格な書類審査をしていく」とのこと。
27日の枚方市は今年の全国最高気温である39.8度を記録したこともあり、特にエアコンを買い替えたいといった向きも多そうなのだが、今回の件を機に「枚方の補助金を貰いたければ枚方の店で」という大原則が浸透し、うっかり“不正請求者”に仕立てあげられる市民が今後出ないように願うばかりである。
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