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プールの水“大量流出”教員らへの賠償請求に巻き起こる批判。税金で補填なら住民訴訟のリスクも?対応に憂慮の自治体は“プール廃止”の動きを加速へ

川崎市立の小学校で大量のプールの水を流出させてしまった件で、損害の半額に当たる計約95万円の賠償を請求した同市の対応に批判の声があがっているようだ。

報道によれば、担当教諭の不手際で5日間にわたり水を出し続けてしまい、約220万リットルを流出したことで、上下水道料金は約190万円分の損失が発生。川崎市は、同校の校長と教諭に過失があったと判断し、今月8日付けで2人に損害額の約半分である約95万円を請求したという。

ところが、そのことを10日に発表した後、市長や市教委宛に電話やメールを通じて「賠償請求は酷だ」「教員不足に拍車をかける」などの意見や抗議が、市内外から寄せられたということ。これを受けて28日には、川崎市の福田紀彦市長が定例の会見で、教員不足と賠償請求とは「まったく別の話」とコメントするも、さらに批判の声があがっている状況のようだ。

自治体が教員に“半額”負担させる根拠とは?

近年では“夏の風物詩”と言えるほど、毎年そういった報道を耳にする感もある、公務員らによる水の“大量流出”問題。

2021年には、兵庫県庁にある貯水槽で排水弁の閉め忘れが原因で、約600万円の水道代が余計にかかったとして、担当職員が個人的にその半額を弁済することに。

当初は、税金で全額補填されるとの見方が大勢だっただけに、半額とはいえ職員が個人負担することになったことに驚きの反応も多く、「個人負担はさすがにかわいそう」といった同情論や、「あまりにブラック」「こういう処分は職員を委縮させる」などの批判もあがった。

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いっぽうで、2022年には神奈川県横須賀市にある市立中学校のプールにおいて、上下水道料金あわせて約348万円分の損失を伴う流出があり、損失額の半額を担当教員および校長・教頭が補填することに。

だが、この件に関しては、担当教員が「コロナ感染防止のため」プールの水を常にあふれさせて、水質をきれいにさせる必要があるとの間違った認識を持っており、別の教員が栓を閉めてもその度に給水栓を開いていたという、なんとも呆れる経緯があったことから、SNS上では「全額を担当教員が負担すべき」との声も飛び出す展開となった。

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ちなみに、こういった水の“流出”があった際に、その半額を教師などの職員に負担させるようになったのは、ここ7~8年ぐらい前からの話のよう。

というのも、2015年に都内の高校でこの手のプール水の流出事故があった際に、とある都民が損害額を独自試算したうえで、「ミスをした教職員らに全額を請求すべき」との住民監査請求を起こしたことがあったとのこと。その際、裁判所から「賠償額は半額を限度とするのが相当」との判断があり、これがその後のケースにおいての“根拠”となっているようなのだ。

また自治体側からすれば、仮にこういった職員のミスによる損害を、全額税金で補填することにすれば、それはそれで住民訴訟を起こされるリスクがあるとの恐れを抱いているようで、ゆえにこの“半分税金、半分職員が補填”という、いうなれば折衷案に飛びつきたいといったところのようなのだが、それでも今回のように批判は巻き起こるわけで、自治体側もこの手のケースの対応には、大いに憂慮しているというのが実際のようである。

財政難等の理由で施設改善ができない各地のプール

とはいえ、毎年のように繰り返される“水流出”だけに、教員らにプレッシャーをかけて注意させるようにするだけでなく、例えばプール1杯分の水が出た時点で自動ストップさせるような装置を付けるといった、施設の改修でもってこの手のミスを防げばいいのでは……といった声も一部からはあがっているところ。

ただ学校のプールを取り巻く最近の状況はというと、老朽化により必要となる施設改修でさえも、多額の費用が掛かることからままならないといった自治体が、各地で続出しているとのこと。

それに伴ってここ数年で、水泳の授業を民間のスイミングスクール等に委託する動きも増えているといい、いっぽうで近くにそういった施設がない学校では水泳授業の廃止、あるいは体育館で授業を行うといった、まさに“畳水練”がリアルに行われている状況というのだ。

現に今回取沙汰されている川崎市でも、財政難や教職員の負担軽減のため、今後市立学校のプールの新設や更新の必要がある場合は、自校に整備せず近隣の市民プールや民間プールなどの活用する方針を、2021年に定めているとのこと。

毎年のように起こる、この手の“プール水流出”を巡るドタバタだが、そういったリスクから回避するといった意味合いでも、川崎市に限らず今後各自治体による水泳授業の民間委託、あるいはプール廃止の動きが加速する可能性は大といったところのようだ。

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