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八戸市の海鮮系駅弁で全国約300人が体調不良。製造地から遥か遠くで販売される現状、さらに他の駅弁と豪華さ競う風潮が裏目に?

青森県八戸市の駅弁製造会社「吉田屋」の駅弁を食べた人々の間で、下痢や嘔吐などの症状が相次いでいる問題で、八戸市保健所によれば体調不良者は20日時点で300人弱にのぼると発表した。

同保健所にはこれまで、1都23県から情報提供などがあったといい、体調不良者はさらに増える可能性があるとのこと。

対象商品は、吉田屋が製造したウニやイクラなど海鮮を使った駅弁11種類で、消費期限が今月16日、17日のもの。駅売りのほかに、複数の商社を通じて北海道から九州まで広い範囲に流通されたという。

原因は製造過程?それとも輸送に問題が?

鉄道の高速化により、移動時間の短縮化さらには駅での停車時間も短くなってしまったことで、今ではその存在理由がすっかり薄れてしまった駅弁。

各地で駅弁製造業者の撤退・廃業も相次ぐなか、近年では駅弁自体がその地方の名物となったり、また全国各地のデパートなどで開催される、いわゆる「駅弁大会」に向けたイベント商品として、命脈を保っているといった状況だ。

そんな駅弁大会のなかでも、毎年テレビに取り上げられるなどもっとも著名なものといえば、東京・新宿の京王百貨店新宿店で毎年1月に開催される「元祖有名駅弁と全国うまいもの大会」。

もともとは百貨店業界で客足が落ち込みがちといわれる「ニッパチ(2月・8月)」対策で、当初2月に開催されたのが由縁だというのだが、ちなみに8月に開催しなかったのは、夏の暑さは駅弁の長距離輸送の大敵で「ありえない時期」だったからだという。

この京王百貨店での盛況ぶりを受けて、全国の百貨店からスーパーに至るまで、様々な時期に駅弁大会やそれに類似した催事が行われるようになったわけだが、今回体調不良者が出たのは福島県や宮城県などでスーパーを運営する「ヨークベニマル」、首都圏でスーパーを展開する「ヤオコー」、さらには中四国・九州地方に展開する「ゆめタウン」など、そんな各地のスーパーやショッピングモールでの駅弁フェアに出荷された商品で、異常が続出する事態となったようだ。

とはいえ、現段階では今回の商品異常が、どのようにして発生したのかははっきりは判明していない状況。ただ、暦の上ではすっかり秋だが、今年は真夏のような残暑が未だ続いているということで、上記のように“あり得ない時期”における駅弁輸送の最中に、例えば各店先の暖かい場所に置いてしまったなどといった、輸送上の不備がひとつの原因として考えられそう。

しかし、食中毒のような被害が特定の販売先だけでなく、全国の売り場で発生していることから、もともとの製造時においてすでに問題があった可能性も大いにあり、早期の原因究明が待たれるところである。

海鮮系をウリにした他の駅弁業者に打撃か

そもそもは、製造されている地域に出向かないと食べられなかったものが、先述のように駅で売れる個数が大いに減ったことで、神奈川・東京エリアで絶大な人気を誇る「シウマイ弁当」やドライブイン・サービスエリアでの販売に重点を移した「峠の釜めし」などの一握りの商品を除いては、製造地から遥か遠く離れた場所で売られることが断然多くなったという昨今の駅弁。

そういった経緯でもって、他地域発の様々な駅弁との競争に晒されることにもなったことに伴い、他商品との競争力の強化ということもあってか、駅弁の中身も昔ならなかなか無かったウニやイクラといった豪華な海鮮食材、しかもそれらが生やそれに近い状態で用いられることが増加。

今回の件で商品異常の対象となった駅弁11種類のなかにも、「しっとりうにと大玉ほたて弁当」「北海道産特選いくらの贅沢丼」などといった海鮮系の弁当が多く含まれていたということだが、そういった風潮がある意味で裏目に出たのではないのか……といった見方も浮上しているところ。

また、今回の吉田屋のみならず、その手の海鮮系をウリにした駅弁を多く販売する他の業者への影響も必至だろうといった声も。今後さらなる被害の判明も危惧されている今回の件だが、駅弁そのものの今後の在り方という面でも大いに波紋が広がりかねない出来事となっていきそうである。

Next: 「現地では食べた人が誰も居ないらしい」

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