どの口が言うのか?イスラエルとハマスに停戦を呼びかけるプーチンの魂胆

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国連安保理でも有効な議論は進まず、出口が見えない状況となっているイスラエルとハマスの紛争。その激化は中東地区のみならず、国際秩序再編のトリガーになるとの見方もあるようです。今回のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』』では元国連紛争調停官の島田さんが、そう判断せざるを得ない理由を、現段階で同時進行的に4つの国際紛争の調停・予防調停に当たっている専門家目線で解説。さらに混乱の国際情勢の中で、日本政府が果たすべき役割を考察しています。

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開け放たれたパンドラの箱。ハマスの蛮行が世界にもたらす大混乱

“Let me state that there is no peace with arms, no peace under oppression.

No fraternity without equality.

My wish is a comradeship of all human-kind.”

(「言わせてください。武力による平和などありません。抑圧の下での平和などありません。

平等なき友愛はありません。

私の願いは、すべての人類が友情で結ばれることなのです」)

これはセネガルの初代大統領で、非常に著名な詩人であるレオポール・セダール・サンゴール氏の言葉です。

サンゴール大統領は1960年から1980年まで20年にわたり、セネガルの大統領を務め、セネガルの統治の基礎を作り上げました。2001年にお亡くなりになっていますが、世界が分断に苦しみ、世界至る所で不条理な戦争が勃発する危険性と懸念を見据えていたのではないかと、今、私は感じざるを得ません。

現在、4つの国際紛争を同時進行的に調停・予防調停を進めていますが、それぞれのケースを深く分析し、解決策を模索する中で、サンゴール大統領の言葉に大きく頷いている自分がいます。

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、実は今週のこのコーナーのタイトルは、先週号と同じものになっていますが、私の中では1週間経った今、さらにこの“開いてしまったパンドラの箱”という表現が妙に、悲しいことにしっくりと来ています。

10月7日にハマスによる奇襲攻撃によって始まったイスラエルとハマスの終わりなき戦いでは、僅か2週間弱の間に少なくとも双方で7,000名以上が命を落とし、その内、約3,000人が子供という悲惨な状況です。

国際社会からの非難と圧力を受けて、イスラエルはまだ地上作戦を全面的に開始しておらず、またラファ検問所を通じた人道支援物資のガザ地区への搬入がやっと始まっていますが、飲み水は全市民の1日分にしかならず、決して十分とは言えません。

そして何よりも、ハマスに横流しされることを恐れて、イスラエルは生命維持に必要なものであったとしても、ガザ地区への燃料の搬入は許可していないのが現状です。

イスラエルとしてはハマスに一斉攻撃を受けてメンツをつぶされたことのみならず、1,500人に上る死者を出し、外国人を含む200人以上がまだハマスによって人質に取られ、人間の盾状態になっていることから、振り上げてしまった拳を下すきっかけを失い、ネタニエフ首相の政治的な責任問題と相まって、“ハマス壊滅”をゴールに掲げている以上、なかなか妥協はできないのが現状のようです。

イスラエルにべったりなイメージがかつてないほど強まったアメリカ政府も、ついにイスラエル政府に対して人道支援のための“戦闘の一時中断”を要請していますが、イスラエル政府はこれには耳を貸していない(貸せない)状況です。

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