ハマスのイスラエル急襲が直接の引き金となり、軍事的緊張が極限まで高まっている中東。「第5次中東戦争」の勃発を危惧する声も聞かれる状況となっています。最悪の事態を避けるため、当事国や国際社会はどう動くべきなのでしょうか。今回のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』ではジャーナリストの高野さんが、さまざまな情報や各国の状況を勘案しつつ解決の道筋を考察。日本については「この局面の打開に貢献できる余地は皆無」のと厳しい見解を示しています。
※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2023年10月30日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:高野孟(たかの・はじめ)
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。
何よりもまず休戦。イスラエル・ハマス戦争を第5時中東戦争にさせないために
10月7日のハマスによる奇襲攻撃で少なくとも1,400人が犠牲となり、220人が人質として拉致されたことに対し、イスラエル側は「イスラエル版の9・11」、「ホロコースト以来最大のユダヤ人虐殺」であり、「ハマスはナチスだ」と最大級の非難を投げつけ、直ちにガザ地区への総攻撃の準備に入った。
ナチス・ドイツが1933年の政権掌握から44年の降伏までの12年間に殺害したユダヤ人は、推定で500万~600万人とされており、それと同等のことが起きたかに言うのはいささか度が過ぎている。まあ、1945年の大戦終了後、あるいは48年のイスラエル建国後、これほど多くの民間人が一度に殺害されたことはなかったというのは本当なのだろうが、だからと言って、10月8日以降28日までに1日平均数十回の空爆を中心とする報復攻撃でガザ地区の子ども約3,000人を含む7,703人が犠牲になった(ハマス保健省発表)「5倍返し」のような過剰な作戦が正当化される訳ではないだろう。
これから戦車隊を先頭にした地上侵攻が本格的に始まってしまえば、パレスチナ側の犠牲者は数倍では済まず数十倍にも達し、ヨルダン川西岸のPLOやレバノン南部のヒズボラまで入り乱れる「第5次中東戦争」に発展する危険さえある。
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