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次は「おせち」でも惨状?高島屋「クリスマスケーキ崩壊」で揺らぐデパートへの信頼感。原因究明が済まぬまま始まる年末年始配送を不安視する声も

高島屋がオンラインで販売したクリスマスケーキの一部が、ぐちゃぐちゃに崩れた状態で購入客に届いた問題で、被害報告の数が25日正午時点で約530件にのぼることが明らかとなった。

報道によれば、問題があった商品は5,400円で販売されていた「〈レ・サンス〉ストロベリーフリルショートケーキ」で、23日ごろからSNS上で写真付きで被害を訴える投稿が相次ぐ事態となっていた。高島屋は25日午前にコメントを更新し、今後は客側から被害の申し出を募るのではなく、「弊社よりお客様へ順次ご連絡させて頂く」対応に変更したことを報告している。

当該ケーキは通常、製造元が冷凍した状態で配送会社側へ渡し、配送会社が期日まで冷凍庫で保管するなどして購入者へ届ける流れになっていたということ。ただ現状、今回の問題の詳しい原因は「調査中」としている。

「デパートを通じてケーキを買う」ということの意味

24日時点では200数件との話だった被害報告の数だが、その当初公表から中一日で2倍以上に増加し、今後さらに増える見込みという見方もあるなど、大騒動に発展している今回のぐちゃぐちゃクリスマスケーキの件。

ケーキの“崩壊”に至った原因は製造過程における問題なのか、あるいは配送時に何らかのトラブルがあったのか、まだ特定できていないということだが、ケーキの監修をしたフランス料理店「レ・サンス」のオーナーシェフの説明によれば、フリルのようなクリームの形状を維持できるよう、委託工場に何度も行って試作を重ね、冷凍で配送するのに問題ないか何度も実験していたとのこと。

また高島屋側も、製造にあたってのキャパをオーバーしないように、ケーキの予約数を慎重にコントロールしていたという。

しかしながら、その原因が実際どうであろうなかろうと関係なく、今回の件では百貨店やデパートに対して多くの利用者が抱いていたであろう信頼感が、大いに揺らぐ事態になっているのは間違いのないところのよう。

このところのデパート業界といえば、松江市の「一畑百貨店」が業績の悪化を理由に来年1月で閉店するほか、岐阜市の高島屋岐阜店も2024年7月末の閉店が決まり、いわゆる“デパートなし県”が4つに増えることが確定的に。また、そごう・西武の売却を巡っては、大手百貨店では約60年ぶりとなるストライキが実施される事態となるなど、同業界の衰退ぶりを如実に感じさせる出来事が相次いで起きているところ。

【関連】島根「一畑百貨店」が閉店で山形・徳島に続く“デパート無し県」に。現在13県が“ラス1”の状況でさらなる増加は不可避か

移ろいやすい顧客ニーズをいつしか掴めなくなり、衰退への道を歩んでいったとされる同業界だが、それでも例えば“大事な相手への贈り物”であったり、あるいはクリスマスなどの“大切な日の食卓を彩る料理”などは、価格はそれなりに高価でも品質が保証されている百貨店やデパートで調達したいと思う消費者は、依然として多く存在。

今回の件でも「高島屋が売っているケーキだから……」という信頼感から、税込5,400円という決して安くはない金額を払ったというわけだが、それがまさかのぐちゃぐちゃという考えられないような状態だっただけに、実際に購入した人々の怒りはさることながら、それをSNSや報道で見聞きした人々の間でも、信頼失墜の空気が広がっているといった状況のようだ。

今週末にはおせちの配送も迫る

今回の件を巡って高島屋側としては、崩れたケーキを送ってしまった利用者に対してのお詫びや返金対応などと並行し、早急に不具合の原因を究明することで、顧客の信頼を取り戻すしかないといったところ。

だが、間が悪いことにそれらがひと段落しそうもないうちにも、年末の「おせち」配送のタイミングが迫っており、SNS上では「1週間もしたら通販おせちの惨劇が待ってそう」「そちらのほうが「食中毒」の発生リスクは高い」などと、そのことを不安視する声も少なからずあがっているようだ。

今回の“ぐちゃぐちゃケーキ”の件では、かれこれ12年前に起こったいわゆる“スカスカおせち”騒動のことを思い出すといった声も多くあがっていたのだが、かえってそのことも“信頼の”デパート業界にとっては追い風となったのか、いまや同業界にとっておせちは一大商戦に。近年ではコロナ禍の巣ごもり需要も相まって、昨22年の重詰めおせちの市場規模は761億円と、19年から約2割増えたとのことである。

もちろん高島屋も多分に漏れず、おせちには力を大いに入れており、今年は約1,150種類と業界最多級のラインアップで臨んでいるとのこと。ちなみにそれらのなかには、今回のケーキの監修も務めたフランス料理店「レ・サンス」が手掛ける、洋風おせちも含まれているようだ。

そんななか、昨今の重詰めおせちのトレンドとなっているのが、冷凍のまま家庭に届けられる「冷凍おせち」。なんでも従来の冷蔵おせちと比べると、食材を調達する時期の融通がある程度利くため、原価を安定させやすく、高付加価値の商品でも値ごろ感のある価格帯で提供できるという利点があり、そのため人気が年々高まっているのだという。

高島屋もその動きを受け、今年のおせちのラインアップのうち約15%を冷凍にするなど、軸足をそちらに置き始めているということなのだが、もし仮に今回のケーキの“崩壊”が配送過程の問題に起因するものであるならば、冷凍おせちも同様に冷凍状態が保たれないまま、各家庭に配送されるといった事態もひょっとしたら考えられなくはないところ。

しかも仮に配送会社側に問題があるのだとすれば、その影響は高島屋に限らず、他のデパートや通販会社、あるいはECサイトなどで購入し配送されてくる、あらゆるおせちに波及する可能性が。決してそんなことが起きることの無いように祈るばかりだが、すでに注文済みのおせちを待つばかりといった向きにとっては、一抹の不満を抱える年末年始となってしまいそうである。

Next: 「高島屋で買って被害に遭うのは普通は想定できねえよ」

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