任天堂がゲーム機「Nintendo Switch」の後継機を2025年3月にも発売する……と報じた日本経済新聞によるスクープが、いろんな意味で波紋を呼ぶ展開となっているようだ。
記事によれば、後継機はこれまでのSwitchと同様に、据え置き型と携帯型の両方の特徴を備えたものとなるいっぽうで、従来機を超える大画面を採用するとのこと。
また日経は発売時期について、転売防止対策として後継機の初期在庫を確保する必要があり、さらに発売当初の有力ソフトの品ぞろえを確保するため、従来予想よりも遅い2025年3月の発売となったと伝えている。
当時の任天堂社長が自ら日経の記事に苦言を呈したことも
初代機の発売からすでに6年以上も経過している「Nintendo Switch」なだけに、仮にその後継機の発売が決まったとなれば、ゲームファンのみならず大きな関心事となるところ。しかしながら、この件に関して任天堂側は、今のところ発表はおろか何らかの反応さえも示していないといった状況だ。
となると今回の件は、日経側が独自の取材あるいは情報網を通じてこの話を掴んだということのようだが……。実際、今月中旬にはブルームバーグによる、任天堂が次世代ゲーム機の発売時期を、25年1-3月期に延期する旨を複数のゲーム開発会社に通達した……との報道もあり、そういった話とも辻褄が合うところなのだが、ただ日経による任天堂絡みのスクープ報道といえば、これまで“誤報”の類も実に多かったとの声も多く聞かれるところ。
その最たる例として語られるのが、日経が2012年に報じた『任天堂、新型Wii多機能に カーナビ・電子書籍』という記事である。
ゲームユーザーがスマホに多く流れているといった状況を受け、ゲーム以外の機能を充実させるために、今後Wiiにカーナビ・電子書籍の機能を搭載するという内容だったのだが、その後任天堂側は報道内容を否定するリリースを即座に公開。しかもそれは、日経による記事であることを名指ししたうえで「数多くの間違いが含まれた」「全くの憶測記事」などと、真っ向から否定する内容だったことから、当時大いに話題となった。
結局、その後Wiiがそのような多機能化を遂げることはなかったわけで、今となっては……ということで「日経にわざと嘘リークを流して、情報流出元を探っていたのでは?」といった憶測も、一部ではまことしやかに囁かれているようである。
これ任天堂がわざと嘘リーク流して情報流出元を特定したと言われてるやつですね。リーク記事を書いてた日経も恥をかいて一石二鳥。 https://t.co/fRWLwf4kBm
— たびお (@taviocwx) February 26, 2024
さらに日経といえば、同じく2012年にも『岩田社長が口にした、任天堂の「没落」』というタイトルで、当時の任天堂社長だった岩田聡氏の社内における発言などを取り上げたルポルタージュを出しているのだが、これに対しては当の岩田氏がSNS上において「不正確な報道」「ゴシップ誌のような手法」などと、当該記事を痛烈に批判したこともあった。
[岩田]ところで、月曜日に電子版媒体で当社に対する不正確な報道がありました。このようなことが何度か続いていますが、文脈を無視して恣意的に言葉を抜き出したり、事実と憶測を混ぜて書いたり、まるでゴシップ誌のような手法を採られていることに驚いています。
— 任天堂株式会社 (@Nintendo) February 22, 2012
もちろん、日経による任天堂絡みのスクープ記事が“当たり”だったことも、これまでに何度もあったわけだが、上記のような“飛ばし記事”の記憶があまりにも印象的なだけに、今回の件もSNS上では「ホンマかいな?」と懐疑的な見方が多く、なかにはこのように日経が度々任天堂絡みのスクープを出すのは「株価操作のためでは?」といった憶測まで広がっているようなのだ。
発売“後ろ倒し”報道で株価は下落
ただ、このような過去の“日経vs任天堂”のやりとりを見てみると、明らかに“飛ばし”といった記事には即座に否定しているイメージのある過去の任天堂なのだが、今回の件に関しては先述の通り沈黙を貫いている状況。
任天堂は、上記のような一部メディアによる報道、さらにSNS上などでの噂の流布などにより、情報が歪んだ形で伝播していく状況に業を煮やし、自らの手でファンに直接情報を伝えるために「Nintendo Direct」という動画コンテンツを展開。
任天堂としては、その存在がすでにファンの間で浸透しているとの認識から、この手の話にはもう相手にしないことにしているのかもしれないが、ただ一部からは「反論しないということは…」ということで、今回の記事の信憑性は高いのではと受け取る向きも、ここに来て出てきているようである。
いっぽうで、今回の“Switch後継機は25年3月発売”という報を受けての任天堂株の動きなのだが、先述したブルームバーグの記事が出た際に続き、今回も若干ではあるが下落する格好に。
2024年内発売を見込んでの買いが、延期との見方で売りに転じたということのようだが、こうしてみると市場のほうも、今回の日経の報道には信憑性がある……と踏んでいる状況のようだ。
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